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[コメント] カムイ外伝(2009/日)

ああ、この監督は『血と骨』を撮ったんだったと途中で思い出す。「忍者」を「在日」へと置き換えてみると、一気に血生臭いリアルになる。粗の多い娯楽要素満載ながら、イデオロギッシュな後味が残る良作。091003
しど

序盤のワイヤーアクション&特撮のシーンは、正直、笑ってしまう。いまどき、こんな不自然なCGは無いだろ、とは思うのだが、実は、漫画が原作の忍者映画なので、こういうのでもいいのかもしれないと、バカ映画のつもりで肩の力を抜いた。が、ギラギラした中盤の物語の展開に息を呑み、終盤でさらに展開していく脚本力にうなる。ここまでやってくれれば、娯楽作品としては十分だ。

原作は「カムイ伝」しか読んでないが、エッセンスは「外伝」も同様じゃないだろうか。システム化された統治権力の前で翻弄される民衆と、しがらみから逃げることで「生きる」抜け忍「カムイ」の、死と隣り合わせの「自由」だ。

さて、そういう本質に話の中心が移りだすと、この監督が在日の立場からいろいろな作品を送り出してきたことに気づく。たしかに、楽しめるドラマ要素も十分だが、監督自身が本気で描こうとしているのは、カムイを巡る「血の掟」であろう。身分を前提にした統治は、理不尽な残酷と滑稽が表裏一体となる。普段の日常は滑稽なままであるが、カムイという異文化が混じり秩序が崩れると、秩序回復のための残酷が露骨になる。

昨今の軽い作品が多い中、このような重いテーマを、きっちり娯楽として完成させられたのは、監督の力量だけでなく、クドカンの脚本力もあるだろう。また、役者陣が良かった。伊藤英明なんか、白土キャラまんまだったし、松山ケンイチは走りや殺陣など動きがとにかく良かった(特撮が無けりゃな(笑))。血がドバドバ出る残酷描写は、白土漫画に忠実だし。

続編が楽しみ。

余談。最後のクレジットでPANTAと仲野茂をみつけた。ミュージシャン系を使う監督だったっけ? パンタはすぐわかったが、仲野はどこに出てたんだ……船に居たのかな?

(評価:★4)

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