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[コメント] KT(2002/日=韓国)

日本人が無気力なのは、国の仕組みがそうなっているからかもね。030916
しど

原作があったせいなのか、史実の羅列っぽくて盛り上がりに欠ける単調なリズムと、 人物説明の不足を原因として、少々面白味に欠ける。 しかし、お隣韓国の近代史なんて、案外知らないし、金大中事件自体もよく知らなかったから、 そうした「知識」を得るのを目的とすれば、まずまずか。

この事件に絡んだ(とされる)自衛隊の存在を描くことで、 米国の傀儡政府である韓国と同様の日本の姿が浮き彫りになるのは面白い。 物語の最初のシーンは、三島の自決から始まり、 自衛隊とともにクーデターを目論んだものの無視されて死んだ三島に、 そっと花を添える自衛隊員(佐藤浩市)が、この物語の主人公となる。 日本で日陰者扱いの自衛隊の中で、さらに防衛大学一期生という立場が、 「自衛隊とは何なのか?」を改めて問いかけてくる。 が、こういう側面を物語に添加したことによって、 映画としては非常に不明瞭な展開になったように思われる。 もう一人、金大中のボディガードに雇われた在日韓国人の若者(筒井道隆)、 なんて存在も曖昧なまま出てきたり。 脇の香川照之、原田芳雄らも含め日本側の役者は非常に良いのだけど、 それ以上に韓国側の人々の切実感が強く作中にも滲み出てるから、 どこか日本側の「無気力感」自体が作品の質自体も希薄にしてしまったように思う。 しかし、機会があれば見て損の無い作品だと思う。

ところで、この事件で指紋をわざわざ残し、 それを「身の安全の為」と語った韓国の一等書記官は、 事件後、行方不明のままだそうだ。 歴史の闇には、個人の意志は反映されない。 同様に三島の死も、今は、その本質を曖昧にしたまま「憂国の象徴」としてのみ使われ、 自衛隊も本来の目的を越えた利用を目論んでいる。 金大中拉致事件の真相が今でもはっきりしないように、本質を隠したまま、誰かの都合の良い断片だけで歴史は重ねられていくのかもしれない。

(評価:★3)

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