コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 自殺サークル(2002/日)

散漫なのに最後まで興味を失わせない力強さ、そして意味不明なのに余韻を残す詩的センス。あちこちに散りばめられた悪意と悪趣味にむしろ映画的希望を見てしまった。030522
しど

8mm、16mmと園子温の有名な作品は過去に見ている。そして、大抵、気づくと上映会場で寝ていた。いつの間にか東京ガガガなんていう徒党を組んでたりする姿もあって、個人的には嫌いな監督であった。だから、今回の作品も期待など一切無く、粗を探すつもりで眺めていた。

過去の作品や他者の作品の焼き直しもいくつか散見される粗をみつけつつ、そもそも、これはオカルトなのかカルトなのか、事件がメインなのか謎解きがメインなのか、単なるエログロなのか特撮フェチなのか、シニカルなのかふざけてるだけなのか・・・見ていくうちに頭の中は混乱を極めていく。そして、その混乱の中、ハタと気づいた。全く退屈していない。意味を追うことを止めた頃、さらなる断片的ながら効果的な意味が提供され、最後は、お得意の散文詩とともに、全ての意味が宙に浮く。

90年代以降の邦画の意欲作の中には、ポップなつもりの野放図や哲学的なつもりの論理破綻を、作品に付随する強固な作家性として一方的に押しつけてくる作品も多い。押しつける割にはほとんどが力不足だったりで退屈極まりなかったりするが、それが逆に「スカシ」として評価を受けたりもしてきた。サブカルチャー的評価といえばわかりやすいだろう。そのような作品群の一つに過ぎないと思われたこの作品は、しかし、表層的に同様の特徴があるのに、桁違いの力強さが根底に存在している。サブカルチャー的産物を散りばめながら、メインカルチャーとしての作家性がしっかりと築かれているのだ。都市を勢いだけで走り回り、かと思えば居場所を求めて鎮座する。過去の作品の中で培われた底力とはこういう物かと思う。傑作にはほど遠いながら、詩人園子温の新たな息吹を感じることができた。

たぶん、次はまた期待を裏切って超駄作でも作るんだろうけど。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (3 人)寒山拾得[*] けにろん[*] tredair[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。