[コメント] ゆきゆきて、神軍(1987/日)
キャメラのまえで得意になって正義の(神の?)使徒を演じる男。その裂け目。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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奥崎氏は、あきらかにキャメラの存在を意識しながらそこで正義の(神の?)使徒の役を演じている。はっきり言ってその厚顔無恥さに於いてはかなり卑らしい存在である。しかしこのような思い込みの激しい怪物でもなければ、詰問される元日本兵達の言葉も引き出せなかったであろうこともよく分かる。キャメラは言わば奥崎氏という類希な(?)怪物を得ることで、彼を挑発し、ふつうなら「話せない事もある…」というような日本的な精神土壌のなかで埋没していくかもしれなかった歴史の記憶を掘り起こし、見る者に与えて考えさせることに成功している(実際、撮影は必ずしも行き当たりばったりではなく、原一男はあらかじめ奥崎氏に内密に訪問相手にアポイントを取り、奥崎氏と元日本兵達の出会いを設定していたのだという)。
監督は奥崎氏から殺害の撮影を頼まれたと言う。結局返事を留保するうちに事件は起こり、奥崎氏は捕まってしまった。真実をキャメラに収めようとする為には殺人をさえ撮影するというのであれば、それは正義の為なら暴力厭わずという奥崎氏と同様の倒錯に嵌まってしまっているように思える。
ちなみに、97年に出所した奥崎氏はAVに出演したりしたらしい。そういう話を聞くと複雑な気持ちになる。それも「天罰」か?
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