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[コメント] 男たちの大和 YAMATO(2005/日)

戦争娯楽作品。
tora

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







久しぶりに劇場で二回観た。

時代考証が正確だったわけでも、戦争映画として秀逸だったわけでもない。そういう意味で粗を探せばいくらでもある。加えて戦時下の人情劇としても行き過ぎで描かれている場面が多々あって恥ずかしさも覚えた。しかし、娯楽作品としては十分よく出来ていたし、また、最近の世相を鑑みて、この作品の伝えたいものが誤解なしに観客へ伝わっているのが感じられて心地良かった。少年兵の拙い演技やエンドロールの映像&長渕の曲に煽られている部分が多々あるとしても、悲惨な戦闘シーンに対して、一茂演じる臼淵大尉の名言が説得力をもち、素直に多くの観客を感動させていた。

邦画で描かれる悲惨な戦闘シーンは、以前なら単なる戦争否定で終わっていただろうし、仮にこの作品の戦闘シーンをやはりそのように捉える観客がいたにしても、そう思わせるような偏った意図は感じられず、実際、そんな単純に考えて涙を流している人は少ないように思えた。もちろん戦争肯定でもないし、いい塩梅で撮られた戦争娯楽作品であると思う。とにかく、中学時代から悶々と思い続けてきた我が国の戦前と戦後世相の大幅な乖離に対する疑問を、理屈ではないにせよ多くの一般人が抱く時代になってきたのはうれしく思う。この作品はまさにそういう流れの一端として世に出たものと勝手に思ったりもした。不景気も意外に悪くない。問題の核心から目を逸らし、虚構の繁栄に浸っている世相に冷や水を浴びせた功績は大きい。この作品でそんな大それたことまで考え抜いてしまっているイタい自分がいた。

けど、、、1.出港前の「お母さぁ〜ん!」2.蒼井優ちゃんの「好きなんじゃあ!」3.同じく蒼井優ちゃんの綺麗な被爆顔、これらは脚色が過度。1.は手紙を書きながらの回想に止めて一堂無言で敬礼とするべきだし、その方がむしろ感動的。2.は蛇足、3.は包帯グルグル巻きで目だけ出してるだけでもよかった。ここら辺はもう少し『連合艦隊』チックな描写を参考にしてもよかったかなと思う。明日香丸船上のお涙劇も、後半ちょっと食傷。仲代さんが何に気づいて大泣きしてるのかわからないし、三人で敬礼の描写も、なんか英霊を小馬鹿にしてるようで妙に映る。他にも「変だな」と思うシーンは大体明日香丸船上だったような。もう少し尺を長くしても問題なかった出来だと思うし、戦闘シーンを切り詰めて人情話に時間を割いて欲しかった。登場人物の多さの割に説明不足で、尺が短いのも相まって、短いエピと細かい差し替えで小走りになったのは残念。

配役的には、キャラが濃過ぎて他の役(平清盛とかw)と変わり映えしない渡哲也、無理に低い声をひり出そうとしてるだけで全然硬派に見えない反町隆史はちょっと失敗だったかなと。でも他に適任者がいないといえばいないのが寂しい限り。

(評価:★4)

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