[コメント] 血を吸うカメラ(1960/英)
死を目の前にした女性の表情を見る恐ろしさに加え、彼の性癖がバレてしまわないかというサスペンスがある。
さらに怖いのが、クラシック・フィルムっぽいムードと題材とのギャップ。この映画の中で主人公の異常な行動だけが思いっきり浮いている。他は別にこの時代に普通にあった映画とたいして変わらない質感なのに。
この時代にもスリラーやホラーってあったけど、そのどれもがそれらしい雰囲気を備えていた。なのにこの映画は違う。そのせいか主人公の狂気が一段と際立って見えた。
つまり「見世物」としてのホラー/スリラーというよりも主人公の人格にスポットを当てたドラマとしての側面が強い。だから彼が犯した罪よりも彼の性癖が暴かれることによる人間関係の崩れに対するサスペンスがある。直接彼の罪に対する映画になってしまうと性格描写が浅くなってしまいどっちつかずの凡作に堕していただろう。彼という人間にサスペンスする映画なのだから。
でも主人公の視点でカメラ越しに見る構図についてはもっと徹底してほしかった。カメラの向こうにもう一つ世界が出来ると、見ている観客はそれに合わせて一つ奥の世界に入っていけると思う。
つまり主人公が撮影している対象をカメラ越しに眺める時は、観客も主人公のいる次元(世界)からそれを覗き込めると思うのだ。
だからそんなシーンをもう少し増やしてほしかった。より一層コメント欄の前半に書いたような恐怖を味わえたと思う。
「見世物」として恐怖する人間ではなく、本当に死を前にした人間の恐怖を。
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