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[コメント] オーシャンズ12(2004/米=豪)

大雑把な脚本、原始的な盗み、力業の展開、ソダーバーグ的薄っぺらさ。この辺に本作の魅力があるんじゃないかなぁ。

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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そもそも、ソダーバーグの映画には「深み」など存在しない。全作品を通じてそうであるし、それこそがソダーバーグ的なものだろう。彼の作品は徹頭徹尾、表層的であり、そこにあるのは表面の肌理、あるいは襞、モンタージュされたフィルムの表層だけである。映像を映し出すフィルム/映し出されるスクリーンの背後には何もない。

前作では、ひとつの盗みの過程を中心に展開することによって統一感が保たれていたが、盗みが物語を構築するパーツでしかない今作では、物語は断片化され、それらのモンタージュによって、かろうじて形式的に統一を保っている印象が強くなっている。すなわち、映画の背後に仮想される物語的統一がますます希薄となり、断片のコラージュという表層に捉えられたままにされる。

ただし、それゆえに、背後に根源的統一性を想定しないがゆえに、ソダーバーグは表層の強度にこそ、その力を注いでいるように思われる。だからこそ、本作で描かれる物語は薄っぺらく、整合性を欠き、大雑把に感じられるが、他方で、個々の出来事は魅力的なものとなる。すなわち、物語の統一性という古代ギリシア以来の形而上学的統一性への物語論的教義から解放され、映画そのものの原理へと赴くことで。

しかし、最新テクノロジーを駆使した防犯装置に対して、体ひとつで立ち向かう姿には、あきれる以前に、感動すら覚えてしまう。機械屋か泥棒かわかんないようなのじゃなくて、あれこそ泥棒の理想像。

(評価:★4)

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