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[コメント] イディオッツ(1998/仏=伊=デンマーク=オランダ)

愚者の視点から非本来的在り方を嘲笑う視点こそが愚か。愚者とはそういったイデオロギーを含め、あらゆるものから疎外されているからこそ愚者なのでは。

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







監督の意図がどこにあるのかは知る由もないが、表面的に現れている「障害者に対する健常者の無遠慮な優しさ」や「アウトサイダーへの羨望」といったものというよりは、「日常生活に追われる事の愚かしさの告発」といったものが中心に据えられているように思えた。アクセルの会社にカトリーヌが現れるところも含め、グループの崩壊の過程で起こる様々な事件は、「愚かさ」に対する誇りを打ち砕くほど、日常生活における社会的束縛が強いことを示している。しかし、ストファーが強要する「誇り」の証明もまた、彼らを束縛している以上、ストファーのイデオロギーは空転している。

結果、作品の思想的基盤が曖昧になり、単なる「アウトサイダー賛歌」に成り下がっている。しかも、ここに登場する役は真のアウトサイダーではなく(一部ホンモノが出演しているが)、アウトサイダーを演じているだけの健常者である。つまり、アウトサイダーの本質である「自由」を得るために演技で自らを束縛しているという自己矛盾に陥っているからタチが悪い。

でも、一方でドグマ方式の真価が発揮されているとは思うが。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)irodori 天河屋[*]

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