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[コメント] EUREKA(2000/日)

少年と少女は何に期待し、何に絶望してるんだろう…。+Helpless観賞、小説・ユリイカを読んでの、追記レビューを書きました。
Linus

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







宮台真司×香山リカの対談集で絶賛されていたので見た。 今の時代は底が抜けた状況で、その絶望感から(あるいは世界と繋がりたい為?)、少年は人を殺し、少女はリスト・カット、拒食症を繰り返すという そんな内容…。でも、そういうことするってことは、少年と少女は、 何かを期待したゆえの反転なわけだ。 少年と少女が絶望するのはわかるけど(若いってだけで片づけてあげる)、 従兄弟やバスの運転手も、人を殺す気持ちにシンパシー感じてはマズイん じゃないのかなぁ。テーマだけあって、結論をださないのは、 作家(つまりこれを作った監督さんになるわけだけど)として、 考えることを放棄したのではないかな…とさえ思ってしまう。 あの従兄弟を殴りバスから引きづりおろした時点で、サワイさんは、 良識ある大人なわけだし、少年と少女に何か言いたいことあれば、言えば いいのに。言えないってことが、現代社会の大人そのもので、 よくぞ表現したって評価につながるとも思うんだけど、二十歳過ぎた大人が この映画見て、この答えださないトコがいいんだよという意見に 収斂されてることに、ちと恐怖を感じます。 どんどん子供は大人をなめるぞ。そしてそんな子供も大人になり…で、 ヤバイ状況の悪循環。色々考えさせられる映画っていう意味では、 評価するけど、子供が口をきけたことを映画のオチ(少しの希望)に したことに、それでいいんかい? と突っ込みいれたくなりました。

(追記)............................................................

なんだか、とっても心にひっかかる映画であったことは確かだ。 だからHelplessを見て、小説・ユリイカを読んだ。 で、結論として、思ったことは、この映画は、やはり映像と文体を偏愛する 人間が作った作品だと言わざるをえない。小説を読みはじめた時は、 映画監督がここまでの文章を書けるんだ。ポスト中上と言っても過言ではないな、と自分の鑑識眼のなさが嫌になった。しかし、最後まで読み終えた 時、一番の核である圭子を描けないということは、この人はテーマ主義の作家だなとしか思えなかった。

私が知りたかったことは、沢井と圭子の関係である。この二人は寝たか 否かだ。もし寝ていないならば、同居する少年が、例え、圭子を殺した としても、少年の方に肩入れできるかもしれない、と思った。 しかし、小説を読めばわかるが、沢井と圭子は、セックスをしている。 一度でも、寝た相手が、少年に殺される。普通は、アンビバレントな 引きさかれそうな感情になるのではないか? 加害者と被害者、どちらも 懇意であるはずの沢井のはずなのに、彼がとった行動は、加害者に対しての 愛情でしかない。殺された圭子に対し、何の感情もわかないのである。 (沢井の心理は小説を参考にしています)

つまりこれは、青山監督が、〈理由もなく人を殺したい人間〉という テーマだけで作った映画なのだ。青山監督がテーマじゃなく、人間を 描こうと思えば、自ずと、圭子を愛した沢井の感情が入ったはずである。 しかしこの映画は、バスジャックの男、直樹、沢井、秋彦全員が、 加害者にシンパサイズするだけなのである。 確かに、スゴイ映画監督だと思う。しかし、器用であることと(映像や 文体の完成度は認めます)、才能は違う、と思いたい。

※追記レビューにあたり、『Helpless』のkionaさんの文章は、 大変参考になりました。

(評価:★3)

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