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[コメント] 光の雨(2001/日)

連赤事件の映画を撮りきったことを評価します。なぜなら、それは、私たちがこうなってしまった原点だと思うから。
Linus

何故、自分が個人主義者で、他人への共感性が乏しく、社会に対し希薄で あるかを考えた結果、やっぱり69年頃を境に日本人が変質したんじゃない かと思ってしまう。それまでの若者は、皆の幸せを考える、アワーイズムの 時代を生きていた。それが、権力との闘争で負けた結果、ミーイズムの時代 に入るのである。それ故、自分を考える為にも、全共闘や連赤事件を知らな くてはいけないのではないか。私はこの映画は、親の世代を知るために見る物ではなく、OURとMEの断絶を考えるために存在するのではないかと思う。

そういう意味で、劇中劇にしなければ、この映画は撮ることも不可能だった のではないか? 私たちは、全共闘の若者たちの純粋性の結果、仲間の リンチに至ったことに、何も共感など持てないのである。もし共感できる 箇所があの映画にあるならば、役を演じる現代の若者たちの「わからない」 という台詞にだけである。光の雨はきっとこの「わからない」を描いた映画 なのだろう。リンチして人を殺したシーンはただの史実に過ぎず、どうして そうなったかは、まるきり描けていなかったし。

高橋監督が、脚本を書いていたならば、ただのあの世代のナルシズムか 懐古趣味に陥っていたことだろう。(ラストの立松和平氏のナレーションは ナルシズム以外の何物でもない)しかし、ホンを40代のプロデューサーを 兼任している青島氏に委ねた結果、断絶を少しは描けたのではないかと思う。純粋は時に狂気に変わる。なぜなら矛盾を認めないし、絶対を求める からだ。しかし、若者の特権は、やはり純粋を追い求めることなんだと 思う。全共闘のあの運動は、権力(親)に対する反抗だったのだ。 それを潰した結果、日本から反抗期は消えてしまった。 あの時代を美化することも、今を批判する気も毛頭ない。 ただ、幸福なのか不幸なのか、なんだか自分という実体のない時代を 漠然と生きているなぁと思うだけである。

(評価:★4)

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