ゴラムの瞳が、猫の目のように変わる。大きくなったり、小さくなったりするそれは、彼の心の動きと連動しているはずである。

彼の表情等はＣＧだが、身体の動きと声でその役者の力量は充分伝わってくる。むしろ、スキンと身体の動きを分離して加工し、のちに統合することによって、あらたなリアリティが生み出されているといえるのではないか。

また、彼のような心性をもつ存在が躍動することで、この物語は単純な善対悪の構図に陥ることを免れていると思う。何かにどうしようもなく憧れ、欲してしまう性は、善悪の判断以前の、本能に近い。その本能に似たものを底にもちつつ、表面上は絶えず揺れ動くゴラムの心、それを誰の目にも明らかにするのが前述の瞳の表現である。

きわめてシンプルかつストレートな表現である。ありふれているといってもいいだろう。だが、陳腐だ、と笑うことは決してできない。