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[コメント] 呪怨(2002/日)

心に信仰を持たない脆弱な日本人の恐怖の感覚と、その荒涼とした心象風景
ボイス母

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







実に、実に日本的な映画。

普通、恐怖映画ではあるはずの、「こうすれば霊に勝てる!」みたいな必勝法もなく、ただギャースカ逃げ回ってお家に引きこもるしか「逃げる手だてはナイのだ〜」というのが、ナンダカ笑える。

特に仏壇のシーンでソレは顕著に表されている。 本来、毎朝お水やご飯を手向け、鐘を鳴らしてお祈りし、既にアチラの世界に行ってしまった自分の家族に話しかける、心休まる場であるはずの仏壇が、何故かこの映画では、「死の煉獄」みたいな場所の扱いになっている。

この仏壇のクライマックスシーン「首だけになって苦悶の表情で仏壇奥に幽閉されている父娘」を見て思わず、吹き出して笑ってしまった。

仏壇、スキなんだけどなあ・・・私も、私の家族も。 鐘を鳴らせて手を合わせ心の中で話しかければ、空気は澄み渡り心は落ち着いて、こんな不信心な信仰を持たない私でも、心はあの世の義母と繋がっているという平穏で清々しい気持ちがしてくるものだ。 (実は墓参りもスキでしょっちゅう行ってしまう)

なんか、死んでしまった家族に色々語りかけたり、思い出したりするのは、悲しい、寂しい部分ってもあるけど、その人の体温や生きていた頃の様子をまざまざと思い出せて、「ちょっと嬉しい」って気持ちも湧くモノだ。

「死」というのものが、自分から遠く離れた別世界のモノと感じている人にとってはこの映画は怖いのかも。 私はなんとなく、死も生も、同じこの世界にあるものだと感じているので、この映画が実は怖くなかった。 (一番怖かったのはオープニングの「この家でそもそも何が起きたのか?」みたいな血まみれ父ちゃんの「イヤ〜ン」なシーン)

後は笑いながら見ることが出来たので、「あ、このシーン、あの映画のアレだね」と思いながら楽しく鑑賞した。 (幽霊の父ちゃんが出てきて何も助けない夢オチシーンはベルイマ●のアレ。仏壇に引き込まれるシーンは「●ァンタズ●」等々)

この「呪いの理由がワカラナイ」というのもなんだか、「現代の無名性犯罪」や「通り魔的無差別大量殺人」を想起させて、日常の漠然とした不安感に触れて、その恐怖感をあおられる気はする。

しかし、そんな「自分の生活に直接触れてくる恐怖感」という仕掛けもあるし、ホラー的な決め絵が映画中、随所にあるのに、「怖い」というより「フォトジェニックでかわいらしい」という印象がするのは何故だろう?

白塗りのせいか?(生前の絆創膏姿の方が、怖い気がしたもの)

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (8 人)プロキオン14[*] はしぼそがらす[*] ふかひれ muffler&silencer[消音装置] ベルガル mfjt[*] アルシュ[*] トシ[*]

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