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[コメント] 奇跡(1955/デンマーク)

真摯な茶番劇。ドライヤー小津
バーボンボンバー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







なにかトボけた感じが全体に漂う。信仰に対する真摯な姿勢というのはここまでいくと笑いが生まれてしまうのか。

画面構図はあいかわらず美しいが『ゲアトルーズ』の完璧さにはまだ敵わない。ディゾルヴなどを使い、まだ完成されていない。しかし、このドライヤーの室内空間の撮り方は、西洋の室内空間の見せ方を完璧に熟知している。室内空間表現という点で小津と比べたら絶対におもしろい。フレーミングの拡がりのつくり方や、禁欲・家族というテーマも似ている。真剣が笑いになってしまうというのも似てるなぁ。

ぶら下がっている紐や、柱時計、シーツなど、揺れるもの。窓枠。これらのモチーフの使い方が本当にうまい。インガが死んで、ミケルは部屋から出てきて柱時計を止めるという動作は圧巻。恐るべきメタファー。

ボーエンじいちゃんの誰とも眼を合わせない演技が気になる。ドライヤーはこういう謎を残す演出をよくやるなぁ。ミケルの演技が素晴らしい。動揺、泣き、放心と怒り、息子として、父として、素晴らしい演技。

マレン(ミケルの次女)のヨハネスへの視線が非常にエロティック。単に可愛いと云ってしまってはいけないような、何か色っぽさのようなものがある。あのこの存在感は恐るべし、だ。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ペペロンチーノ[*]

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