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[コメント] ゴジラ キング・オブ・モンスターズ(2019/米)

絶望感の圧倒的欠如、説得力のないご家族ドラマ、怪獣のでかさの見えないカメラワーク。 褒めどころのほとんどない映画だった。
月魚

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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海外版予告編を見て勝手に『シン・ゴジラ』的絶望感を期待してたのに、ボストンというそれなりの大都市を破壊し尽くしている割には人死に感が皆無。

「人間が描けていない」という(怪獣映画好きを沸き立たせた)前評判は本当だけど、それは「人間ドラマより怪獣バトルを優先した」という意味ではなく、「クッソつまらないご家族ネタを延々見せられる」ということであって、要するに「人間ドラマが描けていないだけじゃなくて、怪獣バトルもろくに見せてくれない」ということに過ぎなかったのが、返す返すも残念です。

そもそも監督は怪獣に夢中なあまり、役者の演出を全くしなかったのではないかしらん。ヴェラ・ファーミガ演じる女博士は地球環境の回復のために何千万人も殺すような決断をする人物なのにマッドサイエンティスト感も狂信者感も皆無だし(演じ方によっては「だからこそ怖い」となるのかもですけど、この場合は「動機が見えない」としかなりません)、その娘も、当初は狂った母親に従っているのが、いつの間にか自分の判断で動き出すんだけど、その気持ちの変化がまるで見えない。

そこに脚本の劣悪さが輪をかけていて、そのたかが小娘一人を救うために秘密政府組織は考え無しに戦力を投入するし、芹沢博士は(8時15分を指した時計を後生大事に持っているにもかかわらず)核のスイッチを入れちゃうし(この核に対する無邪気さは米国娯楽映画共通の気持ち悪さ)、とにかく人間パートが雑すぎて、おかげでせっかく美しい画が時々挿入される怪獣パートが台無しになっているのでした。

チャン・ツィーの小美人(って言うには普通に人類サイズだけど)とか、ところどころでてくるくすぐりも、東宝チャンピオン祭りで育った私に刺さるどころかイラッとするし(この感じは『レディ・プレイヤー1』に似てる)、なんかゴジラオタクがゴジラオタク同士で盛り上がるために作った映画のようで、まあひと言で言うと「私は呼ばれていなかった」ということでした。

あ、そうは言っても褒めどころは皆無というわけではなくて、エンドロールの音楽とか(字幕版は「日本版主題歌」は流れないのでご安心を)、ラドンの登場シーンとか(それなりに怖い)、東宝チャンピオン祭り的に燃える巨大空中空母とか(全然活躍しないけけど)は、悪くないですよ。そこだけだけど。

というわけでお薦めはしませんが、テレビで観たらもっとひどいことになるので、どうしてもという方はできるだけ大きい画面の映画館で、できるだけ見上げる感じでご覧になるのがよろしいかと。

(評価:★3)

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