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[コメント] ウルフウォーカー(2020/アイルランド=ルクセンブルク)

美しい絵、厨二心を刺激する狼の疾走感。でもこのストーリーに私は呼ばれていなかった。(レビューではラストに言及してます。ご注意を)
月魚

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







いやね、もうまるで映画のせいではなくて、本当に私の趣味の問題なんですが、娘を「おまえのためだ」と縛り付けていた父親がなんの罰を受けることもなく、なんの気持ちの切り替えもなく、娘と共にウルフウォーカーの仲間入りしてのうのうと幸せになるラストが耐えられないのです。単に状況に流された結果として仲間に入れてもらえるあたりも虫がいいにもほどがある。あんな毒親、死んじゃえば良かったのに。

イングランド−アイルランドという父権的支配構造(「諸国卿」は英語ではLord Protector、つまり守護者)が、父親−ロビンという支配構造に重なって、さらにロビンはメーヴを「あなたのために」と檻に閉じ込める。それぞれがどのようにそのくびきから逃れるのかというあたりに焦点をおくように見えて、なんだか最後にどうでもいい感じでお茶を濁されてしまったような印象です。

終盤、ロビンが父に歯向かうシーンがすごくかっこいいし、気持ちいいだけに、どうも父親は幸せになりそうだと見えてきたあたりから映画から心が離れてしまいました。

しかしこの「状況に流されたまま結果オーライみたいなエンディングに脱力する」というのは、構造がとてもよく似ている『もののけ姫』と同じでしたね(町のために森と対立するという大枠だけでなく、イングランド人として支配されて間もないアイルランドにやってきたロビンは森の狼に対してもやはりよそ者であるという二重の意味での複雑な「よそ者構造」も『もののけ姫』におけるアシタカの立ち位置に重なるし)。

(評価:★3)

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