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[コメント] ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団(1974/日=タイ)

ファンでなくても卒倒間違いなしの超珍作。しかし現地には「タイ版仮面ライダー」というさらにヒドい映画が存在する!
荒馬大介

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 この映画、ホントに東条昭平が監督したのかな? 再編集版の製作指揮が東条氏で、本当はタイ人の監督がメガホンを取った可能性も捨てきれない。まあ、あくまでも推測だが……そういうフォローを入れたとしても、やっぱりこの映画が珍作であることに変わりは無い。

 ビデオパッケージには正面にデカデカとウルトラマンタロウの写真が映っているが、今回の主人公は白猿ハヌマーンである。とはいえ、ヒーローとしてこの顔が出てくるとさすがにちょっと引く。そして、本編は1歩どころか100歩は引く。

 仏教色が強いとはいえ、ここまで極端だと面食らってしまう。しかも残酷描写が満点。追っかけてくる子供を思い切りぶん殴った挙句、車にしがみ付いてきた少年の頭を打ち抜く仏像泥棒(ヒドい!)。それを観ていたウルトラの母が少年にハヌマーンの魂を授けるのだが、タイの空にいきなり巨大な手が出現し少年の遺体を引き上げるのだ!かくして誕生したハヌマーンは、本当なら意味深なのだろうが、余りにも変な卍型のポーズでバンコク上空を飛び去っていく。はっきり言って、物凄く異様な光景である。

 しかも、これでまだ話の前半が終わったところである。この後ハヌマーンは仏道泥棒を成敗し、地球に近付きすぎた太陽(え?)の神に「もっと地球から離れてくれ」と頼んだり(しかも「そうしよう」とあっさり快諾される)、何度観ても覚えられないほどややこしい名前の登場人物が出てくる昔話が挿入されたりと、破壊力満点。出てきた怪獣達も思いっきりスプラッタな倒され方なのも凄い。音楽は冬木透氏の『ウルトラセブン』劇伴から全て流用したものだが、少年がハヌマーンに変身するシーンではウルトラセブンのそれがそのまんま使用され、違和感満点。つい最近発売されたウルトラシリーズの映画版だけ収録したDVD−BOXの中に、本作は入っていなかったが、まあ無かったことにしたくなるのも分かる気もする。あえて救いの手を差し伸べるなら、「ウルトラマン・怪獣大決戦」や「ウルトラマンZOFFY」のような劇場版ウルトラマン映画と違って、新しく特撮シーンをこしらえてることか。凄いなぁ、こんな珍作があったなんて……

 ……などと当初は思っていたが、これですら日本公開向けに吹替えやらナレーションをつけて、一応は作品として成り立っているのだからまだ許せる。なにしろ、現地にはもっとひどい映画が存在することに気が付いたのだから。本作にも登場したハヌマーンが再度登場する「白猿ハヌマーンと5人ライダー」という映画がそれ。いやもう何が何やら分からないのよ、これ。これと比べれば本作なんか100倍どころか1000倍はましな映画です。

 オープニングからしてタイの公道を並列走行する5人ライダー。でもハッキリ言って、通行の邪魔にしかなってないうえに、横を走る普通の三輪トラックや原付に抜かれるというみっともなさが笑える。おまけにBGMはXライダーの主題歌をタイ語で唄ったもの。イントロこそ「セタァーップ!」×3と叫んでいるが、そこから後は全部タイ語なので何が何だか分からない。出だしからいきなり不安にさせられる映画だが、本編はそれに輪をかけてヒドイ。

 第一、巨大なはずのキングダークが等身大で登場する。しかも全然似てない。それもそのはず、タイの映画会社が東映には無許可で勝手にこしらえた映画だからだ。もちろんライダーのマスクも、マシンも全部現地生産。頑張ってはいるけど、アップになった時はちょっとキツいなぁ。ライダーマンなんて鼻まで見えてるし。

 そして、5人ライダーがピンチになった時、陽気な音楽と共に、ハヌマーンがまたも現われるという恐ろしい(?)展開。最後は彼が巨大になったキングダークを倒して終わる。全てにおいてヘロヘロなこの映画、もし鑑賞の機会があったとしたら……観た後で後悔しても当局は一切感知しないのでお気を付けて。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)甘崎庵[*] 新町 華終

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