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[コメント] さよならジュピター(1984/日)

やる気を感じる場面もあるが、そのやる気に付いてってない部分で大損している映画。
荒馬大介

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 オープニングはいい。火星極地の氷を爆破して巨大人工湖を作るという計画の途中、その氷の下からナスカの地上絵のような図柄が表われる。何やら意味ありげな出だしとなり、ババーンとタイトルロゴが登場。この辺は結構期待させられる作りになっている。

 問題はその後。地上絵やジュピターゴーストを出したのは良いが、結局それがどういう物だったのかはっきり分からないまま終わってしまう。ビジュアルで見せろ、とはいわないが、もう二言三言突っ込んでくれてもよかったはずだ。木星爆破のクライマックスで、ジュピターゴーストから電波が激しく放たれ、それがまるでイルカの泣き声のように聞こえる、という場面が、折角良いところなのに足りない部分を感じてしまうのだ。「大昔、宇宙人が太陽系にやって来て……」という設定を絡めるなら、せめて地上絵がどういう意味か明かしてほしかった。それこそこの映画のやろうとした「宇宙ロマン」だと思うのだが。

 それと、上のイルカ繋がりでジュピター教団。別に存在は構わない。ただその教祖がヒッピー、というか“アッと驚くタメゴロー”ではさすがに引く。2140年に「ゲバゲバ90分」は無いだろう。とはいえこのジュピター教団、捕鯨船どころかプルトニウム輸送船に体当たりしてまで活動を阻止したり(お前が危ない)、毛皮に反対して裸で抗議をしたり(ただのストリーキングだ)する偽善的な自然保護団体みたいなモノなので、案外それに対する皮肉もあるんじゃなかろうか。あくまでも、好意的に見ればの話だが。

 だとしても小松左京は、130分弱という枠の中でやりたいことを少々押し込みすぎた。その分中身は濃いが消化不良気味なのが残念だ。製作費10億円という枠ではその尺がいっぱいだったのかもしれないが、だったらもうちょっと予算と時間を増やすなりするか、あるいは削るところは削るかして欲しかった。原作本は上下巻の大長編なのだから、そうでもしなければ納まる訳がない。

 他にもいろいろあるけど★3つ。どこかで損をしている、という点では数年後の『ガンヘッド』と似ている。しかも両者とも“特撮は頑張っている方”で本編がダメ。しかも特撮監督は同じ人(川北紘一)。この頃の東宝はこんなことばっかり繰り返してたのか?

(評価:★2)

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