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[コメント] 三大怪獣 地球最大の決戦(1964/日)

見どころはキングギドラの光線と、若林映子
荒馬大介

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ……爆発の炎の中から徐々に形を成して現われるキングギドラ。現れたら現れたで、情け容赦無く街をぶっ壊していく(しかも光線だけかと思ったら突風でも壊している)。神社の鳥居越しにギドラが見えたかと思うと、手前に向かって光線が発射されて鳥居が壊されるというシーンは秀逸だ。芸が細かい。

 それに立ち向かうのがゴジラ・モスラ・ラドン。本作が製作された1964年といえば、春に『モスラ対ゴジラ』を作ったばかりであり、年に2回もゴジラが流れるという凄い年だった。しかも三匹出した上にキングギドラと来た日には、これはもう夢の共演だ。話によると、65年の正月映画になるはずだった黒澤明の『赤ひげ』の製作が遅れ、代打として企画されたのが本作らしいのだが、それにしても贅沢である。当時小学生だった金子修介監督が燃えるのも、当然か。

 今回のゴジラは、ギドラが壊し役ということで、そこからはちょっと離れてはいるが恐怖の対象であることに変わりは無い模様。これはラドンも同じ。その2匹を説得しようとしてやってくるモスラ。地球の為に戦おう、と呼びかけるモスラに対して、ゴジラとラドンの第一声が「俺達の知ったことか、勝手にしやがれ!」。危機感無いな、この二匹は(笑)。

 まあこれは、ギドラがどれだけの奴かを知らなかっただけのことなのだろう。ギドラにあえなく吹っ飛ばされるモスラを観て、何かに気付いた2匹は立ち向かうことになる。しかし戦ってる様子だけ観てると、ゴジラは岩(ゴジラにとっては石みたいなもんだ)を投げたり尻尾掴んだりで大したことはしておらす、体当たりを食らわせたラドンや、糸でぐるぐる巻きにしたモスラの方が頑張っているような感じ。平和の使者であるモスラを除いて考えれば、地球の為に戦おうと考えていた怪獣は案外ラドンだったのかも。

 さて本作のもう一つ気になるところといえば、やっぱり金星人=サルノ王女こと若林映子につきる。本編では彼女が王女なのか、それとも彼女にそっくりの金星人なのかということでずっと謎のまま。予知能力を持つ金星人が怪獣の復活を次々と予言することで、怪獣との接点も出来てしまっている。その途中途中で、やっぱりあの金星人は王女ではないのか、という付箋が貼られて行き、さらに王女を暗殺しようとする殺し屋(王女の側近だった男達)が現われるという具合でどんどん話が進み、最後まで緊張感を持たせている。そして最後に、自分を守った進藤刑事(夏木陽介)に礼を述べるサルノ王女の上品さ!「……他のことは忘れてしまった、でもあなたが守ってくれたことだけは覚えている」なんて言われたら、あなたどうします?

 『宇宙大怪獣ドゴラ』(こちらにも若林さん出てます)ではギャングものと怪獣ものとを盛り込ませようとしていたが、ややイマイチの感があった。今回も似たようなことをしているが、こちらは上手く仕上がっている。「理屈抜きに楽しめる怪獣映画」として『キングコング対ゴジラ』を挙げる人は多いが、もしあの喜劇のノリについて行けないと思った方がいたとしたら、こちらをオススメします。破壊の美学と怪獣の激闘、そして若林映子といろいろ味わえる娯楽映画です。

(評価:★4)

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