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[コメント] 怪獣総進撃(1968/日)

「閉店セール売り尽くし」状態で、怪獣がアラウンド・ザ・ワールド!でもムーンライトSY−3の方が活躍してるよね。
荒馬大介

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 東宝怪獣映画としては記念すべき20本目に当たる作品で、製作サイドとしては“第一次怪獣ブーム”の鎮静化も考慮して、とりあえずシリーズは本作で区切りを付ける予定だったらしい。つまり怪獣が勢揃いするのは、オールスター競演というよりは「閉店セール売り尽くし」状態だったということか。が製作費も2億円をかけてこれでオシマイにするはずが、興行成績がそれを上回ったのでシリーズ続行が決定したそうである。世の中、何がどう転ぶか分かったものではない。

 そんな本作だが、怪獣ランドというところに世界中の怪獣を全部まとめて飼育している、という未来世界が舞台。テレビ電話や携帯テレビはあるし、モノレールの形も当時とは違う(でも日本武道館の形は不変)。おまけに戦車は遠隔操作、東京は郊外のミサイル基地で防衛されている……というのはなかなか凄い。それに加えて名機・ムーンライトSY−3が登場。ちなみにこのロケット、ブースター付きなので発射方法はスペースシャトルと同じなのだ。これが劇中、伊福部昭の名曲「怪獣総進撃マーチ」にのって大活躍するからたまらない。キラアク星人の最終兵器・ファイヤードラゴン相手に、燃える円盤を振り落とそうとその巨体をものともせずきりもみ回転するさまはカッコいい。改めて観て「操演頑張ってるなー」と感心してしまった。

 さて「怪獣総進撃」というからには怪獣も活躍しているわけだが……さてムーンライトSY−3と比べて映えていたのがいたかどうか、実に微妙。確かにゴジラはニューヨークを、ラドンはモスクワ、パリにはゴロザウルス(でもバラゴンが襲ったことになってるなあ、可哀想に)、北京近郊をモスラが襲っているし、中盤の見せ場としてゴジラ、ラドン、モスラ、マンダの4頭が東京を襲撃して廃墟にした。最終的にはキラアク星人の操るキングギドラVS地球怪獣連合軍が戦うということになるわけだが、これだけ数が多いともうメチャクチャ。最初こそ引力光線で怪獣どもをビビらせ、アンギラスをボコボコにしていたギドラだが、ゴロザウルスにつんのめされたのが運の尽き。地球の怪獣達にタコ殴りにされたギドラは、哀れ地割れに飲み込まれてしまいましたとさ。

 ……こんな感じで怪獣も頭数こそ凄いが、一頭一頭見ていくと、カッコイイところは全部ムーンライトSY−3に負けているような気さえする(ギドラでさえ負けている)。おまけに、地球VSキラアク星人の激しい戦いのクライマックスは怪獣同士のものではなく、ムーンライトSY−3VSファイヤードラゴンなのだ。さらにそれ以前の問題として、怪獣が暴れていたのは全部キラアク星人のせいで、そのコントロールを破壊したのはムーンライト SY−3のおかげであることを忘れてはならない。結局、映画の中のどこかしらでこの名機が活躍し、決着を付けたのもこの機だ。怪獣より映えて当然なのかもしれない。

 怪獣とメカばかりの話になったが、この映画の中で特に気になった台詞とシーンを書こう。

「帰ることなんて考えるな!スイッチを入れろ!」……これは他の方も紹介してるので深くは突っ込まないけど、この場面のBGMも名曲。ピアノの激しい旋律が緊迫感を煽っていて、実に熱いシーンとなっている。

「ああ、ありゃあSY−3(さん)号だべ。」……偶然にも怪獣コントロール装置を発見した木こりの爺さんが、村上空に現れた飛行物体を見て一言。そのコントロール装置の仕掛けられた場所が、椰子の実の中とか氷の塊とか、教会の十字架のてっぺんに仕込まれていたというのが笑える。

「天城峠で地底怪獣が確認されている。」「……バラゴン?」……台詞ではパリに出現してたり、こんな風に出現したことが説明されたりしてはいるものの、実際に映ったのはほんの数カットのみ。ちなみにこのバラゴン、『フランケンシュタイン対地底怪獣』に出演後円谷プロに譲渡されてパゴス→ネロンガ→マグラ→ガボラと改造されたのは有名だが、本作のバラゴンはそのガボラをまたバラゴンに戻したものだとか。相当使い回されてもう着ぐるみがクタクタ(特に背中とかが)になっているのは痛々しい。

 ……で、これがヒットした関係で、次回作も『ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃』という題名のものになったわけだが、さすがに同じ事は 出来なかったようですね……。

(評価:★3)

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