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[コメント] 海底軍艦(1963/日)

「海底軍艦」という魅力的なメカニックを出しながらも、それ以外の要素がどうもシャンとしないのは……実に残念。
荒馬大介

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 海底軍艦は実にカッコイイ。戦艦のごとく海を行き、潜水艦のごとく深く潜り、そして戦闘機のごとく勇敢に空を飛ぶ!

 この魅力溢れるマシンを操っているのが、日本軍人として使命感と威厳たっぷりの神宮寺大佐というのも良い。だからこそ、20年近く時代から取り残されている間に、日本どころか世界が全て変わり、神宮寺の理想は既に古いものになっていた……というジェネレーションギャップが映える。かつての戦友は「戦争は終わった。日本は負けたんだ」と力なく言われ、若者からは「戦争キチガイ」と称され、愛娘すらも自分を拒んだ時、彼の信念は大きく揺らいだに違いない。

 「日本が戦争に負けたというなら、一体我々は何のためにやってきたんだ!家族とも別れ、全てを捨ててここまでやってきたというのに、海底軍艦を完成させたというのに……!」

 ここで下手に考えると、神宮寺は「天皇陛下万歳」と叫んで自決しそうな気もするが……そうはならず、ムウ帝国に対し堂々と宣戦布告をするのである。  なぜここまで考えを変えられるのかと思ったが、神宮寺達は「国の為」「天皇の為」という信念ではなく、戦争を支えた技術者としてのそれの方が強かった、という気がする。つまり彼等にとっての誇りは、米英大国の技術を凌駕するようなマシン、すなわち兵器を作り上げることに他ならない。そして彼等の技術は、“大日本帝国”の繁栄のために使われるはずだったが、知らないうちに戦争は終わり、とうとう必要とされなくなってしまった。  神宮寺のプライドはここで一度崩壊したはずだ。だがこれこそ、錆び付いた鎧を脱ぎ捨てた瞬間だった。秘密基地を破壊した挙句「海底軍艦を解体せよ」と自らを名指しするムウ帝国に対し、彼の、いや轟天を建造した彼等のプライドが蘇る。軍人として、そして技術者としてのプライドが。

「……ならば、やってやろうではないか。我々の作り上げた兵器が脅威であるというならば、その力を見せてやろうではないか! ムウ帝国よ、轟天建武隊の力をとくと見るがいい!」

 自らが造り鍛え上げた兵器に全ての自身と信頼を与え、果敢に戦うことこそ彼等の誇りとなった。ムウ帝国にさらわれた自らの愛娘を助け出し、そして一度は自分を拒絶した娘が胸の中に飛び込んできた瞬間、神宮寺は何を思ったのだろうか……。

 ……とまあ、海底軍艦だけでもこれだけ熱くなれるのに、肝心のムウ帝国が全然強くない! いや確かに科学力は凄いし、その威力を嫌というほど見せ付けてくれるのだが、それが海底軍艦の突入であっさり崩壊してしまうという呆気なさ。せめて、海底軍艦が航行不能寸前、どうにかこうにか動けるくらいになるような死闘を演じて欲しかった。それがあったら間違いなく★5だったのに。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)おーい粗茶[*] 水那岐[*]

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