★5 | ダークナイト(2008/米) | 旧来型の道徳的正義は、仮面をつけることの特権性と欺瞞性に苦悩する。そして、支配ではなく君臨に意義を見出す絶対悪は、二者択一の無意味さと危うさに酔いしれる。クリストファー・ノーランが描く容赦なき暴力と破壊の連鎖に、今日的価値の混乱と倒錯がみえる。 [review] | [投票(14)] |
★4 | インセプション(2010/米) | 日常を襲う唐突な銃撃と追撃、不安と呼応するかのような空間の歪み、風雪に閉ざされた要塞の美しき威容、想いの重圧に耐え切れず崩れ落ちる人工建造物。展開の巧みさもさること舞台としての夢(心)を具現化する造形が見事。そして、傷心むき出しの純粋恋愛映画。 [review] | [投票(3)] |
★3 | ようこそ映画音響の世界へ(2019/米) | 映画音響の「歴史」が、クリエイターの「意志」と技術の「進化」という鍵を使って説かれるのだが、その前提に「分野(種類)」という視点が加味される。音響デザイナーによる監督作ならではの着眼だろう。手際よく丁寧にまとめられ、かつ楽しい音響史の参考書だ。 [review] | [投票] |
★3 | バットマン ビギンズ(2005/米) | 恐怖だ、正義だ、復讐だと大仰に唱えられるわりに、嬉々として戯れる悪党どもはどれもこけおどしの小者ばかりで話しの底の浅さが露見する。透けて見えるのはSFXだのみの自己満足的から騒ぎ。見習うべきは、一心不乱に道具を自作する微笑ましきブルースの律儀ぶり。 | [投票(2)] |
★2 | ダンケルク(2017/英=米=仏) | 物語を徹底的に排除して「事象」だけで逃避を活劇化するのは、ある種の映画的王道だと理解はするが、単調さを回避する保険として長・中・短の時間軸が有効に機能しておらず狂騒はアトラクション映像の域内。唐突なヒロイズムの誇示も自画自賛にみえてむなしい。 | [投票(7)] |
★2 | マン・オブ・スティール(2013/米) | 今やハリウッドで大流行の「悩めるヒーロー」をとりあえず据えてはみたもののザック・スナイダーは、そんな面倒なドラマになど一切関心がなさそうで、ケント君の葛藤はおざなりに描かれ続けるので「ついにそのパワーが解き放たれた!」という開放感が皆無。 [review] | [投票(2)] |
★4 | インターステラー(2014/米) | 科学が封印され思考が停止した状態に「行動」が加わったとき時間は動き出す。そして時間は止められないというサスペンス映画にとって解決不可能な問題を、守るべきは自分か、家族か、人間かという正解なき命題で煙に巻きつつ壮大なハッタリで無化てしまう力技。 [review] | [投票(5)] |
★4 | オッペンハイマー(2023/米) | 原爆の核分裂反応が引き金となって燃焼連鎖が起こり、地球の大気がすべて燃え尽き「世界」が消滅してしまう可能性。科学者にとっては「near-zero」(ほぼ無い)のはずだった現象は、政治的にはゼロどころではなく必然だった「世界」を今、私たちが生きているということ。 [review] | [投票(1)] |
★2 | サイド・バイ・サイド フィルムからデジタルシネマへ(2012/米) | 画像加工や色処理という作業合理性から始まったデジタル化が、いつのまにか経済合理性の名のもとに全工程を支配してフィルム消失という一大事を招いた顛末や、それが図らずも現場における監督と撮影監督の主導権争いの構図を浮き彫りにするところは実に興味深い。 [review] | [投票] |
★3 | ダークナイト ライジング(2012/米=英) | 合理性を欠いた「悪」こそが真の脅威であり、それへの対峙が、仮面の欺瞞に苦悩するヒロイズムという同時代性を生むのは前作で実証済み。安易に理由付けされ、お決りの因縁話に矮小化された「悪」は、ほどほどの合点を提示するだけで「今」への共感など生まない。 [review] | [投票(11)] |