★5 | 裁かるるジャンヌ(1928/仏) | 1430年5月23日、コンピエーニュ城門前でブルゴーニュ軍の手に落ちたジャンヌ・ダルク。その身柄は英軍に売り渡され、やがて英占領下のルーアンで教会裁判に付されることになる。ジャンヌを魔女として公衆の目前で火刑に処すことを目論むルーアンの領主、極刑だけは免れさせようとジャンヌに改悛を迫る教会の聖職者の狭間で、ジャンヌは苦悩しながらもみずからの信念を貫こうとする。〈73分〉 | [投票] |
★4 | 赤い砂漠(1964/仏=伊) | 高度成長時代のイタリア、殺伐とした風景が広がる工業地帯。工場技師の夫と幼い息子と三人で暮らすジュリアナ(モニカ・ビッティ)は、自動車事故で受けた精神的ショックからいまだ立ち直ることができずノイローゼ状態、その言動にはどこか狂ったところがある。知り合った夫の同僚コラドや彼女を気遣う友人達に誘われて港のコテージで小さなパーティに興じてみたりするものの、不安はしつこく彼女を虫食み晴れることがない。愛すべき幼い息子の存在も、彼女を不安から解放してはくれない。夫が出張するに及び、彼女は不安のあまりコラドとの不倫に走るが・・・。「アントニオーニ初のカラー映画であり、深度の浅い映像で色彩の実験を試みた作品」だという。(1964年ベルリン国際映画祭金獅子賞、1964年国際映画批評家連盟賞)〈115分〉 | [投票(1)] |
★4 | 二十四時間の情事(1959/仏) | 広島に反戦映画の撮影に来ていたフランス人女優(エマニュエル・リバ)が、日本人の建築技師の男(岡田英次)と出会い、一夜の情事に身を委ねる。愛を覚えた男は一日限りで日本を発たねばならないという女の後を追い、ふたりは再び身を重ねあう。女は男と夜の広島を歩きながら、戦争の時代に経験したみずからの悲恋の記憶を物語りはじめる。(1959年カンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞)〈91分〉 | [投票] |
★4 | マリアの恋人(1984/米) | 第二次大戦が終わり、太平洋戦争の過酷な戦場からペンシルバニアの故郷に帰ってきたイバン(ジョン・サベージ)は、かねてから想いを寄せていた幼なじみの娘マリア(ナスターシャ・キンスキー)に求婚、ふたりは結婚することになる。だがイバンは、日本軍の捕虜収容所での忌まわしい体験の記憶と、そこで生き残る為に必死に想い描いていたマリアの面影とを脳裏の中でダブらせてしまい、体を重ねようとしてもマリアとだけはそれができない体となってしまっていた。〈109分〉 | [投票] |
★4 | 旅人は休まない(1987/韓国) | 北朝鮮出身の亡妻の遺骨をその故郷に埋葬しようと旅に出たスン・スク(キム・ミョンゴン)は、だが国境線を越えることが出来ず宛てのない放浪を続けていた。そんなある日、彼は寝たきりとなった実業家の老人とその看護婦をつとめるチェ(イ・ボヒ)に出会う。北朝鮮出身の老人は死の前に故郷に帰りたいと望み、看護婦のチェは前世の夫と巡り会うという神託だけを魂の支柱にして生きていた。チェはスン・スクの亡妻に生き写しなのであった。(1987年東京国際映画祭国際批評家協会賞、1988年ベルリン国際映画祭ヤングフォーラム・カリガリ賞 他)〈105分〉 | [投票] |
★4 | ディープ・ブルー・ナイト(1985/韓国) | 身重の妻を残してアメリカに密入国したペク・ポピン(アン・ソンギ)は、永住権を手に入れて妻を呼び寄せる為にバーで働くジェーン(チャン・ミヒ)と偽装結婚する。当初は見せ掛けだけの関係だったふたりだが、トラブルに面して互いに助け合ううちにやがて本当の恋に落ちていくことになる。だがペクが永住権を取得することで、通い始めたふたりの関係は脆くも綻び始める。全篇アメリカ・ロケの意欲作。(1985年アジア太平洋映画祭グランプリ/脚本賞 他)〈117分〉 | [投票] |
★4 | 顔のない眼(1959/仏=伊) | 移植医療の権威であり病院長でもある外科医ジェヌシエ教授(ピエール・ブラッスール)。彼には火傷の為に二目と見れぬ顔となりはて、今は世間から身を隠し暮らすひとり娘クリスチアヌ(エディット・スコブ)がいた。彼とその秘書ルイズ(アリダ・バリ)は不憫な娘に顔と人生を取り戻してやる為、若い娘を誘拐してきてはその顔の皮膚の娘への移植を試みる。だが手術は容易に成功せず、彼らは過ちを繰り返していくことになる。〈90分〉 | [投票] |
★4 | SHOAH(1985/仏) | 強制収容所を描く映画を論じる際に、必ずと言ってよいほど引き合いに出される記録映画。570分にも及ぶ、当事者達(加害・被害両者)の証言(告発)の記録。(1986年ベルリン映画祭国際評論家連盟賞)〈570分〉 | [投票] |
★3 | インディア(1958/仏=伊) | バーグマン主演作が興行的に不振で、映画を撮れない状態だったロッセリーニが、4年ぶりに発表した新作のドキュメンタリー映画。大まかな構想だけを抱いてインドに渡り、現地で見聞したことを元に、象使い、ダム建設、トラ使い、はぐれ猿など、四つの大まかなエピソードからなる四部構成で、インドの自然と文明や、そこに暮らす人達の人間模様を描いた。評価はよく、1年後には十のエピソードからなる全長4時間のテレビ版も製作され、放送された。〈88分〉 | [投票(1)] |
★3 | 渋川伴五郎(1922/日) | 日本最初の映画スター“目玉の松チャン”こと、尾上松之助主演のサイレント時代劇。ほぼ完全な形で残っている数少ない一編。そのスジは、門弟の讒言から家を勘当された柔道場の跡取り息子(尾上松之助)が、その後紆余曲折を経るうち父親が門弟に闇討ちされたことを知り、敵を求めてついにその仇を討つ、というもの。フィルムを染色して場面ごとの雰囲気に合わせて色分けしたり、化け蜘蛛退治の場面に逆回しやコマ落しといった素朴な技法による特殊効果を施したりと、映画がまだ「活動写真」だった時代の片鱗を見て取ることができる。ビデオ版の活弁は澤登翠。〈63分〉 | [投票(1)] |
★3 | あふれる熱い涙(1991/日) | 日比混血の私生児として生まれたフィリピン女性(ルビー・モレノ)。親の命ずるままに東北の農家に嫁いできた彼女だったが、農家の単調な労働生活に嫌気を差し、ある日突然姿を晦ましてしまう。そして、東京。帰国の為の旅費を稼ぐ生活を始めた彼女は、やがて変わった兄妹(佐野史郎・戸川純)と知り合うことになる。一方その頃、日本人の夫は失踪した妻の行方を追い始めていた。〈104分〉 | [投票(1)] |
★3 | ウルトラマンコスモス THE FIRST CONTACT(2001/日) | 宇宙飛行士を夢見、ウルトラマンの実在を信じている小学五年生の少年・春野ムサシ(東海孝之助)。彼は嵐の夜に一人きりで野営し朝を迎えた公園の森の中で、横たわるウルトラマンを発見する。ウルトラマンは地球へ向かうバルタン星人を阻止せんと宇宙空間で凄絶な戦いを繰り広げ、その末に地上に墜落していたのだ。ムサシの努力でエネルギーを回復したウルトラマンは「ウルトラマンコスモス」と名乗り、「真の勇者」という言葉と不思議な輝石を残し飛び去る。遭遇を吹聴してまわるムサシ。だが誰も取り合ってくれない中、SRCという民間の科学調査サークルが彼の前に現われる。彼らは嵐の夜に宇宙空間で交錯する会話の様な宇宙信号を傍受し、その調査を開始していたのだ。…本編は同名テレビシリーズの序章にあたり、テレビシリーズは成長しSRCに入隊した数年後のムサシ青年の物語となっている。〈90分〉 | [投票(1)] |
★3 | イゴールの約束(1996/仏=ベルギー=ルクセンブルク=チュニジア) | 15歳の少年イゴール(ジェレミー・レニエ)は、外国人不法就労者の売買を営んでいる父(オリビエ・グルメ)を手伝いながら自動車修理工場で働く毎日を送っていた。そんなある日、父が斡旋した黒人労働者アミドゥが現場で事故にあい重傷を負ってしまう。不法就労斡旋の発覚を恐れた父はアミドゥを放置、その為に彼はイゴールに妻子を託して死んでしまう。だが遺体の隠蔽に手を貸してしまったイゴールは、アミドゥの妻アシタに真実を告げることができず、約束を果たせないことに苦悩することになる。(1996年カンヌ国際映画祭国際芸術映画評論連盟賞、1997年LA批評家協会賞 外国映画賞)〈93分〉 | [投票(1)] |
★3 | タルチュフ(1926/独) | 偽善を働く家政婦に騙されて、財産を家政婦に譲ってしまおうとしている老人がいた。老人には俳優をやっている孫がいたが、財産を狙う家政婦に偽りの不行跡を吹き込まれて、すっかり信用をなくしていたのだ。そこで孫は家政婦の偽善を暴くべく一計を案じる。それは映画の興行師に変装して祖父の家を訪ね、そこである映画を上映して見せるというものだった。そしてその映画こそは、偽善を働く似非聖職者タルチュフがその悪事を暴かれる映画、「タルチュフ」だった。モリエールの戯曲を、映画中映画という入れ子構造の手法で映画化したムルナウの作品。〈71分〉 | [投票] |
★3 | 路上(1996/日) | 重い外套を羽織って新宿の路上を独り彷徨する女の映画。神代辰巳のもとで助監督を勤めた経歴のある鴨田好史が、その遺作『インモラル 淫らな関係』の残フィルムで撮影した、言わば神代辰巳への鎮魂のフィルム。〈42分〉 | [投票] |
★3 | アフリカへの想い(2002/独) | かつての伝説的映画監督レニ・リーフェンシュタールが、長い沈黙を経て1973年に発表した写真集「NUBA ヌバ」は、一部にはファシスト的との評も受けながら、大きなセンセーショナルを呼び起こした。それから30年、かつて生活を共にし、友愛を育んだヌバ族の人々と再会するため、レニは再びアフリカの地へと旅立つ。今は内乱続くそのスーダンの地で、果たしてレニはヌバ族の人々と再会できるのか。当時100にも近い年齢を重ねて尚盛んな活動力と生命力を見せていた女傑の、その旅の過程を追跡したドキュメンタリー。〈60分〉 | [投票] |
★3 | ファントム(1922/独) | 市役所に勤めるローレンツ・ルボタ(アルフレート・アベル)は、老いた母親と妹と弟との四人で生活していた。ローレンツは日頃から正しく慎ましい生活の傍ら、本をよく読むこと、詩を書くことを生きがいとしており、折しも書きつけた詩を本にする話ももちあがっていたが、そんなある日、ふとした切っ掛けで顔をあわせた裕福な家の娘に一目惚れしてしまう。一途な恋心を燃えあがらせるローレンツは我を見失い、悪い仲間の影響もあって、道を踏みはずしていってしまう…。ドイツの文豪ゲルハルト・ハウプトマンの生誕60周年を記念して製作された、その自伝的小説を原作とした物語。〈132分〉 | [投票] |
★3 | フォーゲレット城(1921/独) | フォーゲレット城に集まっていた貴族達。だが雨の為に彼らは狩猟に出られないでいた。そこに3年前に弟を銃殺したと噂されるエーチュ伯爵(ローター・メーネルト)が現れる。そしてその真相を知る未亡人で、今はザッフェルシュテット男爵(パウル・ビルト)の妻となっている夫人(オルガ・チェホーワ)と鉢合わせになってしまう。すぐ旅立とうとする夫人だったが、殺された前夫の遠い親戚であるファラムント神父が訪れると聞き、留まる決心をする。そして訪れた神父。だが神父は、夫人と面会した翌日、忽然と城から姿を消してしまう。奇怪な事態に騒然となる貴族達、何も語らない夫人…。果たして神父はどこへ行ったのか? そして3年前の事件の真相とは?〈70分〉 | [投票] |
★3 | スプレンドール(1989/仏=伊) | イタリアのしがない田舎街。街の片隅に建ち、長年古今東西の映画を上映し続けてきた映画館スプレンドール座は閉館の時を迎えていた。そして今、改装の進む館内で、館主のジョルダン(マルチェロ・マストロヤンニ)の脳裏にはこれまでの長い映画人生の思い出が駆け巡る。父親の映画巡業を手伝ってはじめて街を訪れた幼い頃。戦争から戻り父親の映画館を継いだ映画全盛期の若い頃…。そして、いっとき恋に落ちた案内嬢シャンタル(マリナ・ヴラディ)、映画狂の映写技師ルイジ(マッシモ・トロイージ)、その他映画館を支えた観客達など、あらゆる人達の顔がそこには思い浮かぶのだった…。〈114分〉 | [投票] |
★3 | ワンダー・アンダー・ウォーター 原色の海(2002/独) | 戦前は女優として、あるいはナチスのプロパガンダドキュメンタリー映画(『意志の勝利』『民族の祭典』『美の祭典』)の監督として知られ、戦後は一転ナチスとの関係を批判され長い沈黙の時間を強いられた映像作家・レニ・リーフェンシュタールが、その晩年に辿りついた海の世界についてのドキュメンタリー。70歳でライセンスを取得した彼女は、その後2000回に及ぶダイビングでモルディブ、セイシェル、紅海、カリブ海、ケニア等で膨大な海中映像を撮影し、それを1年余りの歳月をかけて編集、101歳にて一本の映像作品として完成させた。彼女の48年ぶりの新作にして遺作。映像の力を信じて、一切の説明やナレーションを排して構成されている。〈48分〉 | [投票] |