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tredairさんのあらすじ: 点数順

★5カリガリ博士(1919/独)ふたりの男が並んで腰をかけている。そこに一人の女がフラフラ歩いてくる。美しいがかなり病んでる。視線も定まっていないし動きも異様。どう見てもアヤシイ。そんな彼女を指し示し、男の一人が話しだす。「実はオレ、彼女の婚約者なんだけどね…。」そして、彼らが体験したオソロシイ話が、何もかもが奇妙に歪む不思議な町の映像とともに再現されていく…。サイレントの古典にしてホラーの原型でもあるという狂気の殺人鬼モノ。夜祭り、見せ物小屋、香具師、眠り男、予言、連続殺人、影、おびえる女、拘束衣、精神病院、心の闇、催眠術、古い文献…。本来はもっと短い作品だったが、検閲を恐れた制作者が上記のシーンとエピローグを付け加えさせたとのこと。ドイツ表現主義について→ [more][投票(16)]
★5アンダルシアの犬(1928/仏)くわえ煙草のひとりの男(ルイス・ブニュエル)が剃刀を研ぐ場面からはじまる、悪夢のようなイメージ連鎖の数々。シュールで不可思議な世界を堪能する魅惑の17分、モノクロ。ブニュエルとダリが一緒にクリスマスを過ごしていた時に、ダリが「昨夜、掌をうようよしている蟻の夢を見たんだ。」と語り、ブニュエルが「何だって? 私は誰かの眼球を切った夢を見たんだ。」と応えたことから企画が始まったとのこと。何の討論もなく仲良く6日間で書きあげたというシナリオは「頭に浮かぶ第一番目のイメージを拾いあげ、反対に、文明や教育から連想されるものすべてを機械的に排除しつつ完成されたもの。」であるらしい。[投票(9)]
★5すべてが狂ってる(1960/日)戦争で父を亡くした次郎は、保険の外交員と重機メーカーお偉いさんの愛人という二足の草鞋でがんばって彼を育てる母とふたり暮らし。母の誕生日だからという理由で女の子とのデートさえソデにしちゃうぐらい「ママ大好き!」な次郎は、だからこそ、その愛人のお偉いさんが大嫌い。戦後のたいへんな時期を乗りきるためにはそうせざるをえなかったのだ、という母の話にも耳を貸さず、「彼の会社が作った兵器がオレの父ちゃんを殺したんだ!」と若者らしい少々アレな怒りを炸裂させ、欲望や希望、絶望が生々しく渦巻く享楽の街へと飛び出してゆく…。いつの時代にもある世代間の断絶と当時の若者風俗を鮮やかに切りとった71分。モノクロ。 [more][投票(5)]
★5銀河(1968/仏=伊)サンチァゴ・デ・コンポステラへの巡礼の道をたどる二人の男、ピエールとジャン。二人のロードムービー(と言ってしまってよいのかどうか少々迷うところだが…、捨聖さんのreviewをご参照ください)を主軸に、様々なキリスト教的エピソードが次々と繰り出される。それらのエピソードは異端派のものが中心だが、例えば「持っていないものは何も与えられないだろう。持っているものは、増やされるだろう。」といった有名な福音書のコトバでさえも、ブニュエルにかかるとかなり高度なギャグとなってしまう…。カソリック圏に生まれ育ったブニュエルの、とんでもないパンク魂が炸裂する102分。[投票(4)]
★5会議は踊る(1931/独)時は1814年、ロシア遠征の失敗をきっかけにナポレオンが失脚し、エルバ島へと流されていた頃。混乱しきっていた欧州の秩序を回復するためにとウィーン会議が開かれ、その議長を担うオーストリア外相のメッテルニヒは、少しでも自国に有利な会議にしようと様々な策略を謀る。一方、そんなメッテルニヒが繰り出す謀略を交わすためにと、ロシア皇帝アレクサンダーは自分の影武者を連れて来墺。そして、彼の来維を祝うパレード中に起きたちょっとした事件を通し、生粋のウイーン娘クリステルと知り合う…。主題歌の「ただ一度だけ」が有名なドイツのオペレッタ、84分。もともとは「會議は踊る」という表記だったらしいブラックな笑いにも満ちたロマンス。 [more][投票(3)]
★5モンド(1996/仏)ル・クレジオの「海を見たことがなかった少年〜モンドほか子供たちの物語」を映像化した作品。 南仏の小さな町に、ある日どこかから不思議な少年がやって来る。彼には家族も住む家もなく、けれどそのぶん自由を満喫し、やはり一般社会からはちょっとずつはみだした人々に受け入れられ町になじんでゆく…。 聖歌やアラブ音楽もこだまする、謎めいたファンタジー、80分。 実際のホームレスや綱渡り芸人が重要な(自分自身の)役を演じるこの映画では、主人公を演じる少年自身も、監督がメトロで見つけた強制送還すれすれのルーマニア系ロマだったとのこと。[投票(3)]
★5ベイビー・イッツ・ユー(1983/米)労働者階級で札付きの不良少年、イタリア系のシークは、転校先の廊下ですれ違った中産階級の優等生、ユダヤ系のジルに恋をする。やがて彼の熱心なアプローチに情をほだされたジルは…。新進のインディーズ監督だったジョン・セイルズが初めてメジャーで撮ったほろ苦い青春ドラマ。とは言え、結局はこの映画の編集権で配給会社ともめたことから、(最終的には彼の意向が通ったものの)セイルズはその後、再びインディーズ道へ戻ることとなる。ロザンナ・アークエットの初主演作でもある105分。流れるテーマはもちろん、シュレルズの「Baby It's You」。<これはビートルズのオリジナルではないっ![投票(3)]
★5アタラント号(1934/仏)セーヌをひたすら上り下りするだけの船、艀(はしけ)。若き船長であるジャンは村娘のジュリエットと結婚したばかり。ラヴラヴなふたりの新婚生活は順調なように思えたが、やがてジュリエットは艀での単調な生活に飽きだし…。短編も含みたった4本の作品を残し、29才で夭逝したジャン・ヴィゴ。彼の遺作にして代表作でもあるこの映画は、(その前作がアナーキー過ぎると公開禁止を受けたことなどから)配給会社により初めは24分も短縮され、タイトルも当時のヒット曲「流れゆく艀」に変更されるという憂き目にあう。が、1990年、イギリスでひょっこり元のフィルムが見つかったことにより、その年のカンヌ映画祭でみごとに復元公開。絶賛される。公開までのいきさつ付き、101分。[投票(3)]
★5自転車吐息(1990/日)新聞配達をしながら浪人生活をする史郎と圭太。受験勉強よりも高校時代に撮りはじめた8ミリを完成することにご執心な史郎に対し、圭太は三浪というプレッシャーに押しつぶされそう。そんな彼らのもとに、今は東京で暮らす圭太の元恋人、京子がしばらく帰省するという噂が…。監督による主演はもちろん、家族まで総動員して撮りあげたといういかにもな(ややワンマンぎみ)自主映画。「俺」という旗を持って疾走する、マッチ一本の灯りで見渡せる93分の青春碑。「終わりだ。嘘ももうつくな。精算してくれ!君の青春を!」監督の意向ということで永らくビデオ化されていなかったが、気が変わったのか2001年にはDVD化までされたとのこと。89年度PFFグランプリ受賞のスカラシップ作。[投票(3)]
★5オルフェ(1950/仏)竪琴の名手オルフェウスは美しいエウリュディケと結婚。けれどもある日、彼女は毒蛇にかまれ死亡。オルフェウスは冥界へ彼女を迎えに行き、その竪琴の音色で黄泉の国の王ハデスの心を動かす。ところが彼女を再び地上に連れ戻すための唯一の条件「地上に着くまでのあいだ決して後ろを振り向かないこと」を破ったため失敗し、悲しみのあまり発狂して死に至る。…という琴座(ヴェガ)にまつわる有名なギリシヤ神話を、思いっきりコクトー流に脚色した作品。オルフェは現代のカフェにたむろする詩人で、身重の妻ユリディスよりも黄泉の国の美しい女王にご執心。冥界への入り口は鏡、鍵は手袋、死に神はオートバイに乗って暴走。冥界では(なんと!)裁判まで開かれている…、といった112分。[投票(3)]
★5皆殺しの天使(1962/メキシコ)エンリケ・ノビレと妻のルシアは、オペラ帰りの名士たち約20名を自宅の晩餐会へと招く。が、まるで何か悪い予兆でもあったかのように、彼らが屋敷に到着する頃には、執事のフリオを除くすべての使用人は逃げ出してしまっている…。それでも和やかに歓談し食事をとる一同。ところがその後、なぜか誰ひとり客間から出られなくなってしまい、また、外からも誰ひとり屋敷に入れなくなってしまう…。極限状態におかれた客たちの悲しくもありおかしくもある醜態や、外で大騒ぎする人々の様子をたのしむ不条理型パニックムービー。95分。「皆殺しの天使」というタイトルは聖書の黙示録に出てくるもので、もともとは友人が違う作品に使おうとしていたものをブニュエルが先にパクったそう。とは言え、きちんと使用許可を求める手紙を書き「聖書の言葉に使用権も何もあるかね。」という返事をもらったそうなのでどうぞご安心ください。[投票(3)]
★5八月の鯨(1987/米)アメリカ・メイン州の小さな島にある別荘。人生のほとんどを一緒に過ごしてきた年老いた姉妹、今や盲目のリビー(ベティ・デイヴィス)と若くして夫に先立たれたセーラ(リリアン・ギッシュ)は、夏のあいだはいつもそこで過ごしている。近所に住む老大工のジョン(ハリー・ケリー・ジュニア)、元ロシア貴族のマラノフ(ヴィンセント・プライス)、幼なじみのティシャ(アン・サザーン)を含めた5人の老人だけで織りなす、ほんの二日間(一日半?)の物語。リリアン・ギッシュはこの遺作でカンヌ映画祭特別賞を受賞し、ベティ・デイヴィスはこれを100本目の出演作とした。陽光きらめき潮風かおる91分。[投票(2)]
★5ヘアスプレー(1987/米)1962年のボルチモアを舞台とした、オールディーズがガンガン流れる(ちょっとだけ下品な)ミュージカル。『ピンク・フラミンゴ』で大人気!みんなのアイドル、ディヴァイン様が出演した最期の映画であり、また、今ではすっかりやせてしまった リッキー・レイクのパッツンパッツンな笑顔が見られるデビュー作。実際にあった黒人差別事件を題材の一つとして、当時のアメリカ文化や若者像などが「カレンズ・ショー」という架空のダンス番組を軸に描かれてゆく。ソニー&シェールのソニー・ボノやブロンディのデボラ・ハリー、ザ・カーズのリック・オケイセック、ルース・ブラウンなど、(まるでアメリカ版三谷幸喜というか竹中直人というかの)多彩な出演者も見どころの94分。[投票(2)]
★5今宵限りは(1972/スイス)「毎年5月16日、聖ネポムクの記念日に、召使たちのための宴会が開かれる。その日は夜中の12時まで、主人と召使いは立場を変えるのである」という字幕から始まる(特に物語はない)夢幻の1時間30分。日ごろの主従関係を逆転させ、貴族たちが召使いのために延々と宴会芸を見せるというただそれだけの話。けれどもそこにはシュミットならではのブラックユーモアや徹底した美意識もしっかりつまっていて、原題の「Heute Nacht oder nie」は邦題では「今宵かぎりは…」と曖昧にしてあるものの、「今宵こそは、さもなくば無」とも読めるのだそうです。リズムがかなり緩慢なので、体調や状況によっては熟睡できるでしょう。聖ネポムクは、場所によってはワインの神様でもあるとのこと。[投票(2)]
★5ラ・パロマ(1974/スイス)娼婦であり歌姫でもある(まるで『嘆きの天使』等でのマレーネ・ディートリッヒを思わせるキャラの)ラ・パロマと、彼女に惚れ込みプロポーズする(つまり例のニワトリ教授を思わせる)青年貴族イジドールの不思議な恋物語。バリバリのメロドラマではあるが、へんてこなカメラやあやしい演技、突然はじまるオペレッタなどデカダン風味の見どころ(つまり眠りどころでもある)がいっぱい。独特の、腐りかけの桃のような色香が全編を通し気だるく漂い、最後まで起きていられれば「映像の魔術師」ダニエル・シュミットを堪能。できるだろう1時間50分。眠れぬ夜にオススメします。[投票(2)]
★5自由の幻想(1974/仏)1808年、トレド。フランス軍に占領されたスペイン人が「自由よくたばれ!」と叫んでいるところから映画は始まる…。と書くと、何やら重い史劇か何かかと思われそうだが、実はこれは二人の家政婦が公園のベンチで読む物語の一場面である。…となると、今度はこの二人が主人公なのかと思われそうだが、これがまた関係なく、同じ公園内にいる他の少女に視点が移ってゆく…。を104分間みっちり繰り返す、かなりシュールでブラックな連想ゲームとショートギャグ(と私は思っている)の数々。とは言えブニュエル翁なので、一筋縄ではいきません。彼いわく「いつも私たちがまさに目前に持っているものを見ることを怠る軽薄さなのだ。」[投票(2)]
★5弘高青春物語(1992/日)キーワードは「旧官立弘前高等学校」、それのみ。清順も以前そこで学んだことがあるという同校の記録や同窓生たちの(熟成発酵された)思い出を、その頃の世相も交え奇想天外に甦らせたジャンル不問のビデオ作品。同窓会のために制作されたというややプライベートなものでもあるため、ある意味、清順ワールドの根幹となる素の部分も堪能できるかも。な、恋も友情もケンカもリビドーも怪談も戦争も革命もイデオロギーも芸術もつまった、当時の若者たちが見聞きし体験した青春の全てがある56分。[投票(1)]
★5狼の挽歌(1970/伊=仏)一匹狼の殺し屋ジェフ(チャールズ・ブロンソン)が、自分をはめた裏社会に生きる人間たちに悲痛な闘いを挑んでゆく。彼が唯一愛したヒロインを演じるジル・アイアランドは、実生活でも死別するまでブロンソンの妻であったとのこと。黄色い太陽が網膜に焼きつく、青空いっぱいの都会の復讐劇。日本では「うーん、マンダム」と彼がCMに出ていた頃に封切られた作品だとか。冒頭のカーアクションやジルのセクシーな悪女っぷりも見ものの120分。[投票(1)]
★5エレンディラ(1983/独=仏=メキシコ)鬼のような祖母と二人で暮らす少女エレンディラは、ある日過失で火事をだす。そして、灰にしてしまった祖母の全財産を償うため、売春婦として砂漠を旅することになる。やがて、その旅の途中でユリシスという少年と出会い…。 ノーベル賞作家ガルシア=マルケスが、自ら脚本も手がけた作品。ちなみに原作のタイトルは「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」で、マルケスは最初から映画化を想定しこの中編をしたためたとのこと。ラテン文学特有の魔術的リアリズムが(チラチラ)顔を出す1時間45分。[投票(1)]
★5ざくろの色(1968/露)カフカス(黒海とカスピ海に挟まれた地域で、一般的にはアルメニア、グルジア、アゼルバイジャン各国を指す。コーカサスと呼ばれることも多い)の文学史には必ずその名が登場するという18世紀の吟遊詩人、サヤト・ノヴァ。彼の数奇な生涯にオマージュを捧げ、彼の残した詩の断片をちりばめ制作された色彩豊かな73分。詩人の幼年時代から始まり、創作活動や悲恋、信仰、老いなどを経て最後は死に至るまでを、8章の絢爛な映像詩で構成してある。本作は、当時の政治状況などから公開まで何年も費やされたそうで、監督のパラジャーノフ自身も弾圧を受け何年も投獄されている。ゴダールの『パッション』は、この作品に影響を受けた作品であるとのこと。[投票(1)]