コメンテータ
ランキング
HELP

[あらすじ] 眠狂四郎勝負(1964/日)

市川雷蔵永遠の当たり役「眠狂四郎シリーズ」の、事実上出発点となった第2作目。本篇あらすじは甘崎庵さんにお任せして、この作品の製作秘話はちょっと素敵な話なので解説で→
AONI

<徳間書店から出版されている室岡まさる氏インタビュー・構成による「市川雷蔵とその時代」より>

脚本家星川清司市川雷蔵からも請われて書いたシリーズ第1作『眠狂四郎殺法帖』。大映が原作者柴田錬三郎から話を変えてはならないという条件で契約していたために、原作に近い形で書いた。すると、売りである狂四郎の孤独や虚無感が無くなり、大変賑やかな失敗作になってしまった。

責任を感じシリーズ2作目である本作は引き下がろうと思った星川清司だったが、監督である三隅研次からどうしてもと指名される。原作の仕立てと人物設定を変えないで再び書くと、三隅研次はそれを却下。原作では端役だった勘定奉行・朝比奈(加藤嘉が演じた役 )と狂四郎の関係はもっと面白くなると言うと、三隅研次はその二人だけ残して、原作を外した作品を書いてくれと要求した。

プロデューサーの辻久一は契約により原作は外せないと言い、お互い譲らない監督とプロデューサーはケンカになる。星川清司は契約脚本家である自分が勝手に変えたということで、責任を全て被ることで原作を外した脚本を書くことを決意。そのことを雷蔵に伝えると、ちょっと間があって雷蔵はこう言ったという

「それをあなただけの罪にはしない。星川さんだけの罪にはしないから。」

そういうことで思うがままに書いた星川。脚本は不思議と問題にならず、映画は完成した。そして試写会の日。なんと原作者柴田錬三郎が見に来ていた!試写が終わると何も言わないで立ち去ってしまう柴田。重役の一人が叫んだ「狂四郎はこれでお終いだ!」

しかし、その晩の朝日新聞の映画評に大絶賛の評論が出た。会社側もシリーズ続行を決定。かくして、「眠狂四郎シリーズ」は大映の名物シリーズとなっていく。

余談として、後日星川清司辻久一柴田錬三郎と食事をすることになった。

「ふーん、眠狂四郎が一人いる所は、吉原裏の浄閑寺ねえ。浄閑寺とは上手いこと考えやがった」と柴田錬三郎

「浄閑寺とは永井荷風が愛した寺で、女郎の投げ込み寺です。狂四郎がそこの庫裡に一人住んでいるというのはいいなと思い、そうさしてもらいました。」「勝手に原作を変えて申し訳ありません」と星川が謝ると、

「とにかく、吉原裏の浄閑寺とはうめえこと考えたよ。映画だから、ああいう狂四郎でいいか。映画はどういう風にやるか知らねえけど、オレはそういう風には書かねえよ。」

ということで、何のお咎めなしで話は収まったそうな。

(評価:★4)

投票

このあらすじを気に入った人達 (11 人)天河屋 Santa Monica ミドリ公園 55march 水那岐 vito tredair ボイス母 若尾好き ぽんしゅう uyo

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のあらすじに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。