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[あらすじ] ハウルの動く城(2004/日)

戦争の足音が忍び寄る荒れ地の裾野に広がる街。父の遺した帽子屋を切り盛りする18歳のソフィー(倍賞千恵子)は、荒地の魔女(美輪明宏)に呪いの魔法をかけられ90歳の老婆の姿に変えられてしまう。そんな彼女の前に現れたのは4本足の「動く城」だった。そこに住む魔法使いのハウル(木村拓哉)は、その悪名の高さとは裏腹に優しくそして気の弱い美青年。ソフィーはそんな彼と弟子のマルクル、火の悪魔カルシファーたちと共に奇妙な共同生活を始める。宮崎駿・スタジオジブリ新作/ベネチア映画祭でオゼッラ(技術貢献)賞受賞/119分 [more] は原作を読み解いての映画における不明点の解析。
アルシュ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけの解説です。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







イギリスの児童文学作家ダイアナ・ウィン・ジョーンズの「魔法使いハウルと火の悪魔—ハウルの動く城」を映画化。後半1/3はオリジナルストーリーとして展開しているし、設定はかなり違うので、原作に縛られるなんて事は微塵も感じてないのが解る。登場人物もより多く、人間関係やら設定にひとひねりもふたひねりもあるので、時間的な制約も考えれば、設定単純化は正解と思える。

★原作による固有名詞

・物語の舞台になる国・・・インガリー国

             王室のある街 → キングスベリー

             港街 → ポートヘイヴン

             ハッター帽子店がある街 → がやがや町

・隣国2国・・・・・・・・高地ノーランド国、ストランジア国

・ハウルの生まれた国・・・ウェールズ

・ハウルの実名はハウエル・ジェンキンス。魔法使いとして営むために港街ではジェンキンと名乗る、王宮のある街ではペンドラゴンとして偽名まで使う。

・マルクルは原作ではマイケル。背が高い15歳の少年、実名マイケル・フィッシャー。

・母はハニーと言う名の設定だが、原作ではファニー・ハッター。

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これ以下、目一杯、原作のネタバレ有りますので、原作を読もうという方はご注意下さい。

★主な相違点を列挙していくと、

・原作では戦争は起きない。但し、隣国2国とは敵対関係にありインガリー国の王室は軍隊を持っている。

・魔法使いサリマンは王室付きの魔法使いだが、男性で行方不明。サリマンの役っぽいのがフェアファックス夫人(映画未登場)やらペンステモン夫人(映画未登場)。

・妹のレティはもっと美人でモテモテ。映画ではもう一人の妹(マーサ)が名前しか登場しない。マーサのみが母ハニーと血がつながっているが、映画ではレティも母の血筋の顔立ち。その上、マーサとレティは魔法で心と身体が入れ替わっている。ソフィは当初認識していなかったが、彼女を含めて魔法を使える才能を秘めている。

・ハウルの姉やら義兄・甥・姪まで登場。

・これを履くと1歩で7リーグ進むという「7リーグ靴」が登場しない(これはジブリさんの得意芸で披露してくれると思っていた)。

・「動く城」の「動く板(ソフィーの城というらしい)」化無し。

・案山子の正体の違い。 人間2人 = 案山子 + 頭蓋骨 + 犬 + 首なし胴体

・映画では柔和した荒れ地の魔女は、原作では最後まで敵。荒れ地の魔女を操る「火の悪魔アンゴリアン」も登場。

 ・・・など相違点は激しく多い。

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★さて、様々な物議をかもしているこの映画の不明点ですが、原作を読み解くと、

●何故ハウルはたかが髪の色で緑のネバネバを出したのか?

ソフィーの浴室の掃除により髪染め剤の配置が変わった事でブリーチが失敗。ハウルは容姿に対して人一倍執着心があるので、「生え変わるまでこの色なのか!」と絶望感でいっぱいになる(その後、盛んに魔法で変えているのだが)。緑のネバネバを出したのは、抗議と癇癪の表れ。

●母ハニーがなぜソフィを裏切るような行為をしたのか?

もともとソフィの父の後妻で、三女のマーサの母。ソフィは長女ゆえにハッター帽子店を継げるように教育するが、ソフィーは腕がいいにも関わらず、いつまでも見習い扱いで無給で働かせ、ソフィとレティはいいようにあしらい、当の母ハニーは贅沢な暮らしをしようとしている。・・・という目で三女のマーサは母に対して批判的に思っていたが、実は老婆と化したソフィーを見破り涙を流し抱擁する程愛情は深い。

映画でも裏切り行為に後ろめたさを残しているのがわかる。

●ハウルとカルシファーの契約について

カルシファーは「火の悪魔」ではなく、その正体は「流れ星」である(映画でそれらしい場面が出てきたし、「星の子」という設定)。

ポートヘイヴンの湿原でハウルは7リーグ靴を用いて燃え尽きて死ぬ運命だったカルシファーを助ける。助かったカルシファーはハウルに契約を持ちかける。ハウルの心臓を借りる事で生き、替わりにハウルに魔術を提供するというものだった。カルシファーとハウルは双方の命を握っていると言うことになる。映画では子供時代のハウルだが、原作では5年前の15歳程度で、魔法使いとしては駆け出しの頃。

原作ではマイケルも流れ星を捕まえようとするが失敗し水没して死んでしまう。流れ星には意思があり、捕縛し契約をすると”火の悪魔”化するようだ。ハウルは「流れ星が死ぬのが気の毒だから」としてとった行動も、後悔もしているようだ。契約により黒魔法の道に歩む危惧があるため、カルシファーとの先行きを案じているからだ。自分の二の轍を踏まなくて済んだと、マイケルの失敗には安堵している。

●映画のラストで契約解除となったのに、カルシファーが何故死ななかったのか?

原作においては、意思とは関係無しにソフィーが命を吹き込める魔法を自然に発揮したから。

●荒れ地の魔女の老化について

映画では全く語られていないが、荒れ地の魔女も「火の悪魔(元は流れ星)」と契約を交わしている。この契約により、若さを保ち長生きが出来るというもの。荒れ地の魔女も本来は善人であった可能性が高いが、長い間(数百年)悪魔と契約を交わしていると悪魔は善悪を考えないため、その能力に慢心し足を踏み外し悪の道へと堕落し易くなる。映画での老化はこの魔力が衰えたためによるもの。

ハウルも「火の悪魔」と長い間契約を交わしたままだと、荒れ地の魔女と同じように悪に身が染まる懸念が十分にある。

●宿敵荒れ地の魔女までも、なぜいとも簡単に居候させたのか?

ソフィー自体も簡単に居候化している。そもそもハウルは損得抜きに「来る者拒まず」の性格らしい。但し、正確には”許可”は与えていない。居候する者がなし崩し的に家族化する。これは小説における”犬”もそうだったし、マルクル(原作ではマイケル)も過去同様だったらしい。但し、原作では荒れ地の魔女は最後まで敵だったので居候はしていない。

●眠る若いソフィーを見てもハウルが動じないのは何故?

妹のレティ、フェアファックス夫人(映画未登場)からのヒントで、カルシファーもハウルもソフィーが少女だという事を既に知っていて、本人にも暫く隠していた。どちらにせよ、ハウルは魔法使いゆえそれらのヒントが無くても、何らかの強力な魔法がかけられているのにはとうに気付いている。

但し、完全若返りは意味不明。

●最大の謎 = ソフィーの若返りについて

映画では、そのきっかけが不明なまま若返ったソフィーだったが、原作では呪いが解けて最後の最後で若返る。その過程に於いて年齢の変化は一切無し。

しかし、ハッター3姉妹には魔力が有る。ソフィーは知らず知らずのうちに見栄えを変える変装魔法を使っていた節がある。また、ハウルやカルシファーはソフィがリウマチで苦しまないよう&心臓に負担が掛からないように魔法で治療をしてあげてはいる。これが映画での中年若返りルックスの変化の理由かも知れない。ちなみに原作の彼女は若返る事を常に願い、それを行動原理としている。

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小説には姉妹編「アブダラと空飛ぶ絨毯—ハウルの動く城2」があり、当初読んでいるとソフィーもハウルの姿も見えない為、なぜ姉妹編なの?と思われるが実は1作目主要キャラがほぼ出演という珍作。その秘密は小説を読んでのお楽しみっ!(多分、映画化は無し)

映画のラストに物足りなさも残る方は、この姉妹編「アブダラと空飛ぶ絨毯—ハウルの動く城2」をチェックすれば、ラストのラストで1作目キャラの成り行きが判明します(ただし、妹のレティはサリマンが女性だった事が影響してしまいます)。

また、「ハウルの動く城〜その後」としてハウル御一行がサーカス団になるというサーカス興行が05年夏にあるらしいが、姉妹編のその後の方がホンモノ。私はどちらかというと第1作よりこの姉妹編の方が好き。読むべし!読むべし!

(評価:★4)

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このあらすじを気に入った人達 (12 人)透明ランナー SUM makoto7774 tredair クライフ 浅草12階の幽霊 4分33秒 ピロちゃんきゅ〜 くたー トシ 早秀 シーチキン

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