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[あらすじ] 山猫(1963/伊)

ジュゼッペ・トマージ・デ・ランペドゥーサの原作を映画化。19世紀後半のイタリア統一戦争時代(『夏の嵐』と同時代)。シチリアのサリーナ公爵ドン・ファブリツィオ(バート・ランカスター)を中心に貴族社会の栄華と没落を描く歴史絵巻。後半、公爵と甥であるタンクレディ(アラン・ドロン)の婚約者アンジェリカ(クラウディア・カルディナーレ)が踊る名高い舞踏会シーンは豪華絢爛。 1963年カンヌ映画祭グラン・プリ。 3時間25分(1964年公開時は2時間41分)
ルッコラ

**ネタバレ注意**
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その舞踏会にはヴェルディのワルツが使われますが、編集担当のセランドレイが発見した未発表の作品だそうです。全体の音楽はイタリアのみならず映画音楽史上の至宝ニーノ・ロータが手がけています。

また、この映画で使用された美術品はすべて原作者のランペドゥーサ家所有のものだそうです。ランペドゥーサはシチリアのパルマ貴族で「山猫」が死の前年の作品だそうです。(「山猫」とは公爵家の紋章)

(「ビスコンティ集成」フィルムアート社より)

ビスコンティ作品初登場のバート・ランカスターは当時50歳。これがともにニ度目となるアラン・ドロンは28歳。クラウディア・カルディナーレは24歳でした。何とこの映画には、日本の岡田真澄もカンヌでスカウトされていたそうです。出演すればよかったのに。

---- 脱線 -----

クリュニーやホイジンガが引用する"ボイオテイアの大山猫"などの伝説にあるとおり、山猫には透視能力があるとされていた。ギリシャ神話でも千里眼を持つリュンケウス(Lynxの能力を持つ者)がアルゴー船の冒険に登場する。これらのことから山猫は明敏さを表すものとして貴族の紋章に使用されるようになった。(澁澤龍彦「幻想博物誌」より)

でもlynxでなくてgattopardなのが疑問です。イタリア語ではgattoは猫、pardは毛皮に斑点のないパンサー(panhera)のこと。ちなみに紋章学では豹(leopart,leopard)は「顔を正面に向け体を横向きに右前肢をあげたライオン」を指します。ドイツ語のゲパルドはジャガー(jaguar;panthera onca)のこと。でもジャガーはアメリカに生息しているし・・それにローマ時代、猫はfelis。ますます判らないのでネコ科の区分は? 〜ヒョウ属(ヒョウ、クロヒョウ、ジャガー、トラ、ライオン、ユキヒョウ)、チーター属(チーター)、ネコ属(イエネコ、ピューマ、オセロット、ベンガルヤマネコ)、ウンピョウ属(ウンピョウ)、オオヤマネコ属(オオヤマネコ、ボブキャット)〜 となっています。古代ギリシャ人がlynxと呼んだのはカラカルという種類ですが、エジプトやインドでは飼いならされていました。(ヨーロッパヤマネコは人間には慣れない)この作品では公爵の時代に妥協せず孤高を貫く姿を象徴しているので、「山猫」は最後の公爵の言葉を意味するものとしての題名なのかもしれません。

------ さらに脱線 ------

なお、ビスコンティ家の紋章は「人を飲み込む大蛇」でジェリーさんが「ベニスに死す」のコメントで例えられていました。また、黒魔羅さんが「若者のすべて」でおっしゃていたようにイタリアの自動車ブランド「アルファロメオ」のエンブレムに、ミラノ市の紋章(白地に赤十字)と組み合わされて使われています。

(評価:★5)

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