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[あらすじ] ニーベルンゲン 第一部 ジークフリートの死(1924/独)

時は中世。ライン河畔のニーダーラント国の王子ジークフリートは修行の為、鍛冶屋の見習いになっていた。向こう見ずな暴れん坊。ある日1本の剣を仕上げる。その素晴しさ。・・・儂(わし)でさえ、ここ迄は・・・と親方のミーメに妬みの心が生まれる。「もう教える事は何も無い。国へ帰るがよい」。外へ出たジークフリート。村人が談笑している。「それが絶世の美女でよ―」「縁談をことごとく断っているという噂じゃ―」聞き止めたジークフリート。・・・そんな美女がいるのか。どうせこのまま帰っても、つまらないし・・・。「おい、それは何処の姫だ。その国はどっちの方向だ?早く教えろ」。村人「そう急に言われましても」(まだまだ続きます)
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その時傍で聞いていた親方。その心によこしまな影が差す、「ワシが教えてあげよう」。親方はジークフリートの乗った馬を引き、裏山の奥へ奥へと進む。三叉路に来て、「あっちの方角じゃ」。「では、さらば」と去るジークフリートの背を見ながら、呟く・・・もう会う事も無かろう。

そうとは知らず、意気揚々と奥山に馬を進めるジークフリート。やがて、前方に、竜が出現した!炎を吐く竜だ。しかし、怖気づく彼ではない。例の剣をもって立ち向かった。そしてグサッと竜の心臓を突き刺すと、その返り血を全身に浴びた。その時小鳥が囀る―竜の血を浴びたものは不死身になる―。がその時、背中の1か所だけに菩提樹の木の葉が貼りついて血を浴びなかった事に、彼は気付く由も無かった。

そして何日も旅をして、ジークフリートはいつしか小人の国ニーベルンゲン族の山に入っていた。そのボス、アルベーリヒが高い木の洞で退屈そうにしている。「おっ、若者だ。1つ驚かしてやろう」。懐から出した‘隠れ頭巾’(それを被ると、何にでも変身出来る。姿を消すことも可)を被って、透明になった。そして樹上から馬に飛び乗ると、やにわに首を絞めつけた。びっくりしたのはジークフリート。が、後ろ手で見えない相手をつかみ、諸共に下へ落ちた。ボカボカと殴りつける。「すみません、々」アルベーリヒが頭巾を脱ぎ、姿を現す。「許して下さい。この頭巾を差し上げます」。「何―、俺は殺されかけたんだぞ。こんな物でごまかされるか」と、更に殴りつける。「分かりました。ではあなたに、あの有名なニーベルンゲンの財宝を差し上げます」。

2人は岩の割れ目から地下へ、地中へと降りて行く。最下階には大きなテーブルが有り、その上に金銀財宝が山と積まれていた。ジークフリートも目を見張る。「ほら、これが世に2つとない黄金の剣です」と言いながら、アルベーリヒは徐々にジークフリートの後ろへ回り、卓上の大きな布をそっと持ち上げ、彼の頭にさっと掛けた!が、気付かれ体をよけられた。「し、しまった」。「やはり、俺を殺すつもりだったな」。ジークフリートは黄金の剣を手に取り、アルベーリヒの胸に突き刺した。ギャー。「おのれー、呪いをかけてやるぞ。これからこの財宝を所有する者に、永遠に災いあれー」。アルベーリヒの最期だった。

その後ジークフリートは、目指すクリームリヒト姫のブルグント国に着く。合った瞬間2人は一目惚れ。そして、重臣ハーゲンが頼みごとをする、「実は、わが国王グンターは北の国の女王ブルンヒルトにプロポーズしているのだが、彼女は顔が美しいと同じくらい剛の者として有名で、結婚相手には‘3種競技’で私に勝った者と言われている。そこで、剛勇無双のジークフリート殿に是非お力をお貸し願いたいのだ」。ここから、ジークフリートの運命があらぬ方向へと動き始める。物語は始まったばかりだ、143分。

*[鑑賞の手引き その1]

本作は「ニーベルンゲンの歌」の映画化であるが、あらすじを読まれて「なぁんだ、英雄の話か」「知ってる、聞いたことあるよ」と言われると思う。又「いや、私の読んだのとは違うな」という声もあるかもしれない。

英雄伝説(sage:サーガ)というのは口伝え(口承)なので、その語り手のその時の興趣によって、様々なパターンがある。 そもそも本映画も原典と大筋だけが同じで、後は全く違っている。本映画は、ゲルマン英雄伝説の1つの形と言える。つまり、映像を生かして「ニーベルンゲンの歌」+「皆が知っている大衆本の物語」という形になっている。

ゲルマン英雄伝説の系譜、本映画の立ち位置を明らかにする為に、簡単な歴史年表を作ってみた。これであなたも、ゲルマン・サーガ通になれる。ごゆっくり、どうぞー。

 5〜7C(世紀)・・・ゲルマン民族の移動により、多くの英雄伝説が生まれる。(形態は口承・歌謡) [→北欧神話へ。「エッダ」、「ヴォルス           ンガ・サーガ」等]

 12C (1160年頃)・・・英雄伝説の1つ、「ブルグント伝説」の成立。(書かれた物として。作者は吟遊詩人か)

 13C (1204年頃)・・・「ニーベルンゲンの歌」の成立。(立派な韻を踏んだ叙事詩で、作者は宮廷詩人か騎士か。上記「ブルグント伝説」を後           半(映画では第2部)とし、「ブルンヒルト伝説」を前半(映画では第1部)に据え1つの物語とした)

 13C 〜   ・・・・「ニーベルンゲンの歌」の書写が多くなされる。

 16C 〜   ・・・・「ニーベルンゲンの歌」は、やがて忘れられるが、印刷機の発明(1439年?)により様々な英雄伝説のいわゆる大衆本が流           布する(〜現在)。

 18C 〜   ・・・・「ニーベルンゲンの歌」の書写が、多く発見される。

 19C 〜   ・・・・‘ニーベルンゲン伝説’として詩、戯曲等が作られる。特にワーグナー作の楽劇「ニーベルンゲンの指輪」。

 20C 〜   ・・・・映画「ニーベルンゲン」(本作)の製作。漫画等、特に「ニーベルンゲンの指輪」松本零士。

 21C 〜   ・・・・映画「ニーベルンゲンの指輪」(監督:ウーリー・エデル)の製作。漫画、小説も有り。

[参考:ネット‘wikipedia’、書籍「ニーベルンゲンの歌 前・後編」’11年石川栄作訳=ちくま書房、「中世ドイツ叙事詩研究」’48年相良守峯著=郁文堂 他]

(評価:★5)

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