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[あらすじ] ふたりのトスカーナ(2000/伊)

1943年夏のイタリア、ペニー(ヴェロニカ・ニッコライ)とベビー(ラーラ・カンポリ)の姉妹は両親を交通事故で失う。二人はトスカーナに住む伯母のケッチェン(イザベラ・ロッセリーニ)に引き取られることになった。ケッチェンとその夫であるヴィルヘルム(ジェローン・クラッベ)はフィレンツェ郊外で大農園を経営しており、夫妻の誠実な人柄は、屋敷の召使達や、農場の小作人達にも慕われ、大戦下で迫害された芸術家達もヴィルヘルムの保護を求めて彼の屋敷に滞在していた。引き取られた二人は、当初は夫妻の娘と喧嘩し、奔放な振るまいは召使達を困らせる。大戦末期の学校ではファシズム教育が強化され田舎にも暗い影が見え隠れする。しかし、姉妹は伯父夫婦の愛情を受け、美しい田舎で農園の子供達と共に元気いっぱいに育っていく。
Kavalier

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけの解説です。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







[作品背景] 原作はロレンツァ・マッツェッティによる、1961年出版の、イタリアの三大文学賞の一つであるヴィアレッジョ賞を受賞した自伝小説『空が落ちてくる』より。映画・原作では、ペニーとベビーは姉妹ですが、実際には2人は双子であるそうです。また、作中での伯父一家の姓は「アインシュタイン」ですが、かの有名な物理学者の親戚であるとか。この作品後、続編が2作品書かれており、2作目の"Con rabbia"は『娘たちは怒りをこめて』とのタイトルに和訳され、早川書房より1965年に出版されています。映画単体だとこの時代を伝える歴史小説としての側面が強くなっていますが、3部作全体として見た時、ロレンツァ・マッツェッティという女性の、過去の自己探求とトラウマの克服物語でもあるそうです。また、ロレンツァ・マッツェッティは、映画監督として、『豊かなる成熟』(1961)『かくしカメラの目』(1962)といった数篇の作品を監督しています。

監督の、アンドレア・フラッティアントニオ・フラッツィは双子の兄弟。イタリア国内ではTVドラマの製作者として有名であり、今作品が映画初監督作品。

[作中の歴史背景] 国王によるムッソリーニの逮捕が1943年の7月25日。連合軍(イギリス軍)のイタリア本土上陸は9月3日。イタリアの連合軍への降伏は1943年の9月8日。しかし、ドイツは降伏したイタリアへ進軍し9月10日にはローマを占領、ムッソーリーニを救出し傀儡政権を建設。イタリア国内では、この傀儡政権(ファシズム政権)と反対勢力との対立も激化する。伯父が映画中に合流するのは、このファシズム政権への反対する民兵集団であるパルティザンである。連合軍のローマ入場は1944年の6月の4日。

ムッソリーニは、1929年に、半世紀以上に渡ってイタリア本国と対立を続けていたヴァチカンとの和解を行っており、その際にムッソリーニはイタリアの国教としてカソリックを是品すると共に、初等中等教育においての宗教教育を義務付けた。逆に、カソリック教会は、ムッソーリーニの個人的権益を擁護することとなった。作中でも教育と神父・司教と軍人との兼ね合いが描かれている。

イタリアによるユダヤの政策は、ムッソリーニがユダヤ人・文化との付き合いがあったことからも、ドイツのような差別政策は大戦の前半には行われていない。しかし、傀儡政権の成立以降は、ドイツと同様の政策が取られることとなった。

映画後半に姉妹が出会う男、「聖ジュゼッペ」は、聖母マリアの夫である、ヨセフのイタリアでの呼び名。

以下は、あらすじに書けなかったキャストの配役です。

召使のローサ(バルバラ・エンリーキ)、 アインシュタイン家の長女マリー(アッズラ・アントナッチ)、 アインシュタイン家の次女アニー(セレーネ・アルタウロ)、 ピアノ教師のピット先生(ポール・ブルック)、 ピットの妻で、ヴィルヘルムの従姉妹である画家マヤ(エレナ・ソフォノバ)。

[参考文献]原作小説ならびに、映画パンフレットより

最後に、この映画を見られた方へ「ネタバレ」の線引き提案。公式サイト、宣伝文、他サイトの批評・感想において、この映画が「ユダヤ問題」を扱ったことを明記していますが。映画中では、主人公達が引き取られた伯母の家庭が所謂「ユダヤ系」であることは、中途まで隠されています(家族の姓が「アインシュタイン」ということまで中盤まで明らかにされません)。何より、ラストにおいての、一家と主人公の扱いを示した映画のミステリーとしての構造を考えた時、「ユダヤ」についてコメントで言及した時、それはネタバレに抵触するのではないかと考えます。もし、鑑賞後にコメントをお書きになる場合、そのことに留意して書くべきではないかと思い提案します。(もちろん「それはネタバレではない」との考えでコメントをお書きになることは御自由です。)

(評価:★5)

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