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[あらすじ] ゴジラ(1954/日)

日本近海で原因不明の船舶の遭難事故が頻発した。さらに伊豆諸島・大戸島を嵐が襲うが、ただの自然災害とは思えない被害が確認される。派遣された調査団の目の前に、謎の巨大生物が姿を現わす。海底の奥深く眠っていた古代生物が、原水爆の影響で怪獣と化したのだ。大戸島の伝説から「ゴジラ」と命名されたその怪獣は、やがて日本を恐怖のどん底に陥れる……。(モノクロ・スタンダード97分)
荒馬大介

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけの解説です。

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 企画当初の題名は「海底二万哩から来た大怪獣」。プロデューサー・田中友幸がタイとの合作映画企画が頓挫し代替案を立てる必要に迫られた際、当時の大ニュースだった“第五福竜丸事件”をヒントに立案されたものである。なお海外では追加撮影・編集が施された「Godzilla,King of the Monsters」(日本公開題『怪獣王ゴジラ』)として公開され大ヒットした。

 とにかく前例の無い映画だったので、製作サイドとしては思考錯誤の連続だった。最初に作られたゴジラのモンスタースーツはラテックス製だったが150キロある超重量で動けず、あえなく作り直し。素材を軟質プラスチックに変えてようやく動けるようになったが、それでも100キロあった。これを二人の役者(手塚勝巳・中島春雄)が交代でゴジラを演じたが、重い上に暑く、一回の撮影で4キロは痩せたという。ゴジラを演ずることとなった中島春雄氏は元々斬られ役専門(『七人の侍』では突然現われた三船に斬られている)で、次は怪獣役だと言われて困惑した。だが氏は動物園の檻の前でいろいろ研究をした結果、摺り足で進むことを考案したという。

 破壊用の石膏ミニチュアの製作も一からの製作となった。、余りにも頑丈に作りすぎて壊せずNGが出ることもしばしば。そこであらかじめ切込みを入れ、壊しやすくするという工夫が施された。もちろんリアルさを出すためならば素材にはこだわらず、放射能火炎を浴びて溶ける鉄塔にはロウが、ゴジラがグニャリと曲げるテレビ塔にはアメ細工が、勢いよく火が回る道路には炭団(たどん=炭の粉を練って固めたもの。昔の燃料)が使われている。また、円谷英二らスタッフが特撮の打ち合わせで銀座のデパートの屋上に来た際、「新橋あたりに火をつけて銀座辺りに燃え広がらせよう」と意見を交わしていたところ、変な人物だと思われて警察から不審尋問を受けた、というエピソードも残っている。

 無論特撮だけでなく大筋となるドラマにも同等の力が注ぎ込まれたのは言うまでもない。原作は怪奇小説の大家・香山滋に依頼されたが、氏は大乗り気で引き受けこれを3週間でまとめ上げた。そして脚本の村田武雄、監督の本多猪四郎によってさらに映画としての味付けが施され、本編では随所で“戦争”の影を伺わせる台詞や演出が観られる。映画完成後の試写で、終了後一人涙を流している人物がいた。原作者の香山氏だった。「ゴジラが可哀想だ……」そう呟いて泣いていたという。

 製作費は当時で1億円という額に達し、興行的にも未知数だったため、プロデューサーの田中氏は公開前まで不安のし通しだったという。そして1954年11月3日、封切を迎える(なのでこの日が“ゴジラの誕生日”となる)。別の仕事で渋谷駅に降りた田中氏は、駅前まで続く長い行列に気付く。何かと思って先頭まで行ってみるとそこは渋谷東宝、公開されていた映画は『ゴジラ』。大ヒットを確信した瞬間だったという。結果として本作の興行収入は1億5千万円に達し、同年の興行成績ランキング第5位にランクインされた。

(評価:★5)

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