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[POV: a Point of View]
時代の痕跡ーATG公開作品(80・90年代篇)

円熟。すなわち終焉。
A★5ツィゴイネルワイゼン(1980/日)ひとが切り通しを抜けるたびに、時空の裂け目から存在のあやうさが露出していく。 [review]投票(8)
A★4海潮音(1980/日)突然現れた生(なま)の女(山口果林)によって、呪文のような海鳴りに同期し閉ざされた女たちの「性の気配」は揺さぶられ、やがて「おんなの匂い」となって密閉された空間を漂い始める。そして、二人の男(池辺良泉谷しげる)を狂わせる。投票(1)
A★4ヒポクラテスたち(1980/日)漠然と拡散し続ける希望の先に、責任という名の帰結に向かって収束する行く末が垣間見たとき、青春は青春というモラトリアムに疑義を感じ始めるのだ。人生で人が最も輝いて見えるときであり、最も狂気や死が近くに忍び寄るときでもある。 [review]投票(2)
A★3ミスター・ミセス ミス・ロンリー(1980/日)オンナそのものの原田三枝子と、体制に弾かれた半端な男達(宇崎竜童・原田良雄)とういう神代辰巳の定番設定なのだが、物語の枠組みを意識した行儀の良い演出が息苦しい。桃井かおり秋吉久美子が持っていたズレ感が原田に無いからだ。投票
B★5ガキ帝国(1981/日)都市で育った少年たちにとって、街とはすなわち遊び場であり、万博を目前に変貌する大阪で遊び場を取り上げられたガキたちは、知らず知らずのうちに一線を越え、踏み込んではならぬ大人の領域に迷い込む。無邪気な暴走が生んだ乱暴で唐突な青春との決別儀式。 [review]投票(2)
B★4風の歌を聴け(1981/日)相手を覗き込むように凝視する巻上公一の神経質そうな鼠。それを、ふわりと受け流す小林薫が醸す僕の空っぽさ。密でもなけば疎でもない関係。物語を語らずに、状況の気分を見せることに徹した脚本構成が上手い。大森が大森一樹であった最後の作品。投票(1)
B★3遠雷(1981/日)家と土地の呪縛。農家という今でも不自由さを残す空間を生きながらも、永島敏行石田えりが発散するすがすがしさは、まさにもぎたての果実や野菜だけが持ち得る青い力のようだ。許せないのがジョニー大倉の甘え。また長いんだ、このエピソード。投票(4)
B★3近頃なぜかチャールストン(1981/日)戦後23年目の傑作『肉弾』から13年目。’81年、岡本喜八は何に不安を感じていたか? [review]投票(1)
C★5転校生(1982/日)人生で最も過剰に性を感じ意識する「とき」。それは否応なしに自己と他者を自覚する「とき」であり、誰もがその「とき」を通過して「自分」になるのだ。だから最後はサヨウナラなのだ。小林聡美という少女が少年に見えたとき、我々はあの「とき」を思い出す。投票(2)
C★4TATTOO〈刺青〉あり(1982/日)常識から逸脱した感覚を持ちながら、自分ではまったく気付いていない男。その行き着く先は痛々しい。西岡琢也の良く練られた脚本を宇崎竜童が好演。 [review]投票(2)
C★4怪異談 生きている小平次(1982/日)抑制のきいた演出が異界のムードとリズムを生み出す。宮下順子の秘められた魔性も不気味。そして魅惑的。投票
C★3さらば箱舟(1982/日)寺山得意の時間遊び。寺山得意の仕掛け無し。ちょっと退屈。投票(1)
C★2九月の冗談クラブバンド(1982/日)内藤剛志古尾谷雅人が良い。後は全部ダメ。何がダメかをひとつひとつ挙げていくと、一晩かかりそうなのでもう書かない。以上、おしまい。投票
C★0キッドナップ・ブルース(1982/日)
D★4家族ゲーム(1983/日)家族という生活単位と社会との関係が希薄になったとき、そこに閉ざされた習慣とルールが芽生え始める。まるで無人島に何十年もとり残された漂着者のように。部外者は舟でそこを訪れ、救出のヘリは爆音をとどろかせるも、彼らはただただ惰眠をむさぼるのみ。投票(7)
D★2生きてるうちが花なのよ 死んだらそれまでよ党宣言(1983/日)女はダンサー、男は原発ジプシー。ともに彷徨う身。学校を追われた生徒と教師が、二人にからむ・・・。もっと面白い話になるはずなのに、脚本も森崎演出も冴えがない。投票
E★5台風クラブ(1984/日)大人は子供達の不安と不満を混同する。彼らは、本当は不満など持たない。あるのは不安。だが、それを示すすべも持たない。なぜ、私達はそんな事も忘れてしまうのだろう。投票(11)
E★4お葬式(1984/日)伊丹映画の中で最もバランスのとれた作品。その後、彼は本当は何を撮りたかったのだろうか・・・ [review]投票(2)
E★4廃市(1984/日)文芸映画というと古めかしい語感があるが、まさに小説世界の映画への置きかえ成功例。大林宣彦監督は、柳川というロケ地と内藤誠桂千穂の精緻な脚本、小林・クレバー・聡美の三つを得た時点で映画の90%を完成させていたのでしょう。 投票
E★4人魚伝説(1984/日)永遠を象徴するかのような青い海と、尽きることのない欲望のごとく噴出する赤黒い血。純白の海女装束は「青の世界」で生を謳歌しまばゆく輝き、「赤の世界」で果てしなき恩讐に染まる。血、血、血。鮮血の女神の化身たる白都真理のなんと神々しいことよ。投票(5)
この映画が好きな人達

このPOVを気に入った人達 (6 人)tredair 華崎 水那岐 ボイス母 町田 マッツァ