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[POV: a Point of View]
越境の70年代末〜侠道から堅気へ

「ATG」と「日活ロマンポルノ」と「東映実録路線」に牽引され辛うじて命脈を保った70年代日本映画だが、半ばから息切れ閉塞感が横溢する。そんな77年、松竹大船で孤塁を守る山田洋次は主演に任侠映画のヒーロー高倉健を迎え成功。これを契機に日本映画の男優地図は塗り替えられていく…。A:高倉健 B:若山富三郎 C:渡瀬恒彦 D:菅原文太
A★3八甲田山(1977/日)2人の旧友が南北から行軍し山中ですれ違うという映画的に高度なロマンティシズムは、現場主義のM的雪中地獄で雲散し、定型のダメ上司との確執劇のみが残った。対比的にモンタージュされる緑の青森の風景がこれ又陳腐で萎える。本物志向は尊重したいが。投票(2)
A★3幸福の黄色いハンカチ(1977/日)松竹大船の旧来型物語を驚嘆すべき細部のリアリティで絶妙に補完する山田の美質はメインの物語に於いては説明的な回想を値引いても尚効果的だが、武田桃井のパートではリアリズムはベタついた作為に粉飾される。カメラ使いも相当に場当たりだ。投票(2)
A★3野性の証明(1978/日)ひろ子にガン無視されて不憫でさえある健さんだが斧振り回し脳天叩き割る蛮性と寡黙な礼節とのアンビバレンツが笑える。自衛隊特殊部隊と地方都市のフィクサーと予知能力を持つ少女…出鱈目で過剰で魅力的な設定だが全てが茶番めいてるのが凄すぎる。投票(3)
B★5悪魔の手毬唄(1977/日)囁き声で語られる伝承・噂などの毀誉褒貶が地方村落体の本質を衝き恩讐の果ての事件を語るに絶妙。キーマン方庵のフィーチャーこそ肝でアバンタイトルでの湯気立ち籠る温泉や6番目の妻おはんの峠越えなど気合乗り十二分のシーンが続出。シリーズ屈指の出来。投票
B★4衝動殺人 息子よ(1979/日)救い難いまでの時代錯誤感とあからさまなメッセージ臭を割り引いても尚、真摯さは心を打つ。1.5線級の配役陣の入魂の演技と岡崎宏三の平板でありつつ的確な深度を携えたカメラワーク。木下恵介最後の輝き。投票(3)
B★3火の鳥(1978/日)大スケールの物語を撮り方と編集で何とかカバーしようという心意気は感じるし脚本も「黎明篇」を巧くダイジェストしている。だがアニメ使用が何とも中途半端で肝心要の「火の鳥」に至っては実景に全く親和しない。虚実ない交ぜのコンセプトの立て方が生半可。投票(1)
C★4事件(1978/日)どこにでもありそうな地方都市での痴情事件をメカニカルな法廷ものとして組立て、尚且つ、事件の中から一種神話的な人間の根元性を抽出し得たと思う。新藤兼人脚本の良さもあるが松坂の情念と永島の生硬さの組み合わせの妙。助演も全て圧倒的。投票(7)
C★3皇帝のいない八月(1978/日)自衛隊の内部クーデター計画が端緒について官軍中枢の権謀術数がパノラミックに描かれる前半には、極右というものがファッションではなくファナティックであった時代の空気が濃厚に在り見応えもあるが、後半は緩いパニック映画の出来損ないになった。投票(2)
C★0神様のくれた赤ん坊(1979/日)
D★3ボクサー(1977/日)絶妙にクールな因縁関係の師弟を設定し程良い前衛を交えて過不足無い展開を見せるのだが文太のやさぐれ感はともかく天井桟敷による又かの市井の人々が過剰であり、又具志堅等の本物を出してしまったのが否応なく虚構を浮かび上がらせてしまった。投票
D★3太陽を盗んだ男(1979/日)時代の空気に乗ったアナーキズムとノンシャランが横溢し味を醸してはいるが、所詮は投げ遣りなので構築されたカタルシスに遠い。原爆製造の4畳半と皇居前のシーンは流石の粘り腰だが、一方でカーアクションは陳腐。終盤の若干なシュール味も逃げに思える。投票(5)
D★1犬笛(1978/日)平凡な男が娘を取り返す為にみせる凄まじい執念が泣かせる話なのに文太じゃ平凡な男でないから駄目なのだ。そしてキラ星のごとく出てくるチョイ役の面々の救いがたい1.5級感。リアリズムの欠片もない予定調和を中島貞夫は怠惰にトレースしている。投票(1)
この映画が好きな人達

このPOVを気に入った人達 (5 人)ナム太郎 worianne ぽんしゅう 町田 Yasu