[コメント] アラベスク(1966/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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オープニングを観た時、一瞬ヒッチコック作品かと思えた位に凝りまくっていた。それに登場するキャラも蒼々たる面々で、よほど力を入れた(あるいはヒッチコックを意識した)作品だったのだろう。
ある意味もの凄く豪華な作品なのだが、そんな豪華な映画で何やってるのか。と言われると、“単なる馬鹿のようなこと”をしているというのが何とも。
…単に“馬鹿”というのは言い過ぎか。二転三転するサスペンスと、それに合わせてエスカレートしていく派手な演出。アクション、スペクタクルてんこ盛り。と言った見せ場たっぷりの作品。と言っておくべきだろう。
しかしながら、あまりにも目まぐるしく場面が展開し、更にその場面毎に主人公を含めた全キャラの言動や性格が微妙に変わるため、話があっち飛んでこっち飛んで。と言う具合に一定せず、折角のサスペンスも底が浅くなってしまった。
矢継ぎ早に主人公を危機に叩き込み、その合間にお色気やお笑いシーンを入れる。と言う作風で深みを感じろと言うのが土台理な話だ…そもそもこう言う作品に深みを求めるの自体が間違っているのかも知れないけど。
だが、褒めるべき部分もたくさんある。
一番はこれが作られてるのが60年代という点だろう。この辺の構造はモロに80年代に好まれていた作風なので、20年も先行していたわけだ。
それに思い切りの良さ。60年代だと、丁度スペクタル性を取り混ぜたアクション作品が出来はじめた頃だが、通常の監督だったら、ここに丁寧な人物描写や静的なサスペンスに力を入れれたくなり、政治的な風刺も入れたくなるところを、それら全て完全に無視。動的なアクション一辺倒で押しきってしまったと言うのはある意味潔く、「俺は娯楽映画監督なんだ」というドーネン監督の主張が垣間見えるような気にもさせられる。これくらいさばさばとしてたら、細かく言う必然性もなかろう。
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