[コメント] 旅路(1958/米)
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群像劇で見せるメロドラマ。心に傷を持った男女が集まり、傷を悟られないように会話をしているが、やがて少しずつ距離が近づくに従い、その寂しさが分かってくる。という感じで話は展開していく。雰囲気としては『逢びき』(1945)を群像劇にしたような感じ。
元より私はメロドラマが苦手。途中までは正直退屈なだけで、ぼんやり観ていただけだったが、話に飽きは来なかったし、後半の方になると不思議にしんみりさせられもした。
これはおそらく本作はメロドラマの形式としてとても単純でありながら、実はここに描かれていたのは愛では無かったと言うことが分かってきたからなんだと思う。いや、愛は愛なんだけど、男女の性愛の部分はかなり引っ込んで、隣人愛というか、お互いを分かってやることでいたわり合いへと変化していくところにあるんだろう。男女一対一の関係ではなく、群像劇にしたのはそのためではないかと思う。
それに舞台がホテルというのも面白い。原題は『Separate Tables』と言うが、それを『旅路』とした邦題が良い。ここに登場するほとんどのキャラは旅の合間にこの場所に立ち寄ったものたちばかり。みんな旅の途中にある。そしてこれまでの彼らの旅は、傷つけあい、心に傷をつけられ続けたもの。その中で、立ち寄ったホテルで、これまでの自分の心を精算していく。旅先で立ち寄る癒しの空間。それがこのボーリガードホテルだった。つまり、本作は舞台だけでなく、このホテルそのものが実は主人公であるとも言えるだろう。一見メロドラマに見えて、奥が深いものがある。
キャラも適材適所。特に女性陣の演技が映えているのも特徴。カーもヘイワースも、見事にはまり役。
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