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[コメント] 座頭市牢破り(1967/日)

シリーズのテコ入れ作品だが、ちょっとずれてしまったかな?
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 これまで既に15本の映画が出来ていたシリーズだが、ここからこれまでのシリーズとは少々異なる雰囲気を持つようになっていく。

 それは主演の座頭市を演じる勝新太郎が勝プロダクションを立ち上げ、映画製作にも乗り出したからである。これまでと同じ作風では特徴がないと、新たな風を吹き込むようにしたから。そしてその第一回作品として投入したのが本作となる。

 本作を観ると、勝新太郎がどれだけ本作に入れ込んでいたかが分かろう。プロダクションの最初に定番的な物語を持ってきたのは手堅いが、作品そのものをこれまでとは全く違う位置づけで作っている為、かなりの異色作ができあがった。

 まず監督を社会派監督の山本薩夫に依頼したと言う時点で、どれだけ本作を大切にしていたかということが分かる。これまでのシリーズとは明らかに一線を画した異質な物語になっている。

 座頭市はシリーズとしては長命だが、長いシリーズの場合、どうしてもパターンに陥ってしまいがち。固定ファンをつなぎ止める為に演出はどんどん派手に荒唐無稽になり、その分設定やら物語性を単純化させてしまうこととなる。その最たる例が本シリーズだったわけだが、勝新太郎自身がそれを痛感していたのだろう。だからこそ、刷新する思いで山本監督に任せたものと思われる。

 内容的にも、いかにも当時の左翼人が作ったと言う感じで、農民と搾取者との対立を主軸に、この殺伐とした時代に人として生きるとはどういうことなのか?ということを真っ正面から描いている。

 その視線はとても新鮮で面白い。ただ申し訳ないのだが、この手の物語はちょっとお説教じみていて、軽く引いてしまうし、主題が社会的な重さに重点を置いている分、物語のテンポが悪い。

 あと、どんなに善人ぶっていても、搾取者は悪であるというオチに持って行ったのは、後味が悪いだけでなく、「資本家は悪」という単純な構図に見えてしまうのでモヤモヤした気分にさせられてしまった。

 仮にこれがシリーズの第一回作品であれば、諸手を挙げて「名作」と言えたのだが、シリーズのてこ入れとしてはふさわしくなかったのでは?という思いが沸々と。

 シリーズの中の作品としては必ず観ておくべき作品には違いないけど。

(評価:★3)

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