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[コメント] ピカレスク 人間失格(2002/日)

構成的には太宰治が関係を持った5人の女性との馴れ初めをオムニバス形式描いていて、話の進行がわかりやすいところは好感が持てる。
わっこ

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太宰治の波乱に満ちた生涯を描いた作品で、太宰治の実像を変に美化して描こうとせずに客観的に描かれていて、従来の作家を描いた作品とは一線を画した人間味が感じられる。

構成的には、太宰治が生涯に関わった5人の女性との馴れ初めをオムニバス形式に描いていて、話の進行がわかりやすいところは好感が持てる。また2時間以上の上映時間ながらテンポはよく、だれた展開が少ないとこもよい。

しかし、太宰治の女性関係に焦点をあてた作品としてみるとやや不満が残る。例えば、最初の結婚相手である戸山初枝の間のエピソードでは二人の結婚生活部分がほとんど描かれず、芥川賞の受賞に奔走する太宰治の姿ばかりに終始しているため、初枝との心中未遂に至るまでの経緯が唐突な上に曖昧な部分も多い。さらに最初の心中未遂を起こす田辺なつみや2回めの結婚相手である津島佐知子とのエピソードに至ってはあってもなくてもいいような中途半端な位置づけにあるためキャラの印象も弱い。そのわりに「斜陽」のモデルとなった太田静や3回目の心中事件で一緒に命を落とした山口冨美栄とのエピソードはしっかり描かれているので構成上のバランスが今ひとつ悪いように思える。

それと最初の心中事件で殺意がないとはいえ妻を殺されているのになつみの夫が太宰治に対し無関心なのも違和感がある。普通なら恨みを抱きそうな気がするが。またこの作品での太宰治の実像を見る限りではそれほど女性をひきつけるような魅力が感じられないのに太宰治と関係を持った女性は皆最後まで太宰の下から離れようとしないのも変な感じ。

正直この作品での太宰治の実像は映画を見る限りでは、親の仕送りを受けたいがために親を騙したりと試行錯誤したり、芥川賞を受賞するために審査員のコネを使おうとしたりするなどかなり悪賢い面が中心に描かれていて、そのクセに友人や恩師が芥川賞を受賞するとふて腐れたり、切羽詰ると物事を周囲のせいにして自分は自殺未遂を起こしたりするところなど実に身勝手だが、映画の中では結構コミカルに描かれているので、変に違和感がある。後、太宰治を演じた河村隆一は学生時代から晩年を演じきっているということもあって、学生時代の時には一応役柄上、若作りはしているのだが、年相応に見えてしまうのが辛い。

(評価:★3)

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