[コメント] 2000人の狂人(1964/米)
ゴアシーンの真っ最中に屋外から室内への瞬間移動があったり、逃げている最中にお色気のつもりか女が緊迫感もなしにスカートをめくって足を洗い始めたり、と一貫性のない映像と間延びした展開が妙な雰囲気を醸し出すが、別にそれは撮影上の手落ちや水増し的な編集のせいであって、「演出」という名でとらえるべきかはまったく不明。中編として刈り込めば相当な映画になりそうなところを、きっちり律儀に90分の映画に仕上げてしまうのが、"Two Thousand Maniacs!"と素敵なハッタリついでに"!"までつけてしまう商売人ハーシェル・ゴードン・ルイスなのだろう。そして一回出来上がってしまうと、いったいどこを切ってもいいやら、こういう映画としてもう完成しているとしか言いようがない。もっぱら映画そのものとは別のところに才能があったからこそ、うっかり映画史に名を残す監督なのだと思う(って、『JUNO ジュノ』でも絶賛の『血の魔術師』すら見ずにこう結論づけては暴論に違いないのだけれど、それはまたそっちを見たときに考えましょう。ということで、残念ながら、「マニア以外は」と言われて身に覚えのあるマニアはちゃんと見ておく必要があるのだ)。
率直な感想を言うと、どうなのだろう、個人的には、「へへへ、これからアイツにこんなに悪いことをしてやるぜ」とばかりにいちいち親切心たっぷりに画面の前で長々と相談を続ける村人たちに、なんとも疲労感がたまった。総じて村人は(撮影)手順をこなしているだけで、素晴らしく陽気なカントリーを除けば、「お祭り」感覚は言われているより希薄ではないだろうか? 唐突性があるようでまったくない、この作り(いや、だから、それは半分は演出上の意図というより単なる水増しのせいだと思うけど)は、その後の『アメリカン・ナイトメア』作品群の不穏さとはやはり歴然たる違い。とはいえ、あのドキュメンタリーに黙殺されている気がするのは、たぶん、忘れられていたからでも軽視されていたからでもなく、単純に関わるのが面倒臭かったからだろう。この場合の面倒臭さはある意味偉大さの証明だ。まさに我が道を行く。私も面倒臭いので、とりあえず以上。
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