[コメント] パラダイム(1987/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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SFホラーはジャンルとしてはマイナーながら、数多く後のメジャー監督を生み出してきた、メジャーへの登竜門的な位置づけとされている。だが、このジャンルにおいて、この人の右に出る者はいない。と断言できるのはこの監督をおいて他になかろう。ジョン=カーペンター。彼は他の監督達が有名になり、一般向けの作品に取りかかるのを後目に、予算があろうが無かろうがこのジャンルにこだわり続け、好きな作品だけを撮り続けるという希有な監督だ。又、予算不足…と言うか、これも単に好きなんだろうが、大半の自分の作品の音楽まで作っているのでも有名。更に本作においてはマーティン=クォータマス名義で脚本まで書いているという凝りようである。ここまでくると、本当に立派だと賞賛したくなる。しかも出来上がったものが、やっぱりこれまでの(そして以降の)カーペンター作品と変わっていないと言うのも実にポイントが高い。
SFホラーというのはおおむねにおいて決まり事がある。どれほど壮大な敵が出てきても、ほんの一部の空間で終わらせること。どれ程大がかりの設定であっても、それを救うのは個人であること。更に細かい特撮は真剣に撮るが、大がかりな映像技術は用いないこと…古くは『光る眼』、『ボディ・スナッチャー』から『ターミネーター』に至るまで、概ねこれは守られてきた(近年これも崩れてきたけど、予算を使ったり、話を壮大にしたからと言って決して面白いのが多いわけでもない)。この手のジャンルはあまり予算を使えないので、こうならざるをえないと言う話もあるが、それでも良い作品はかなり沢山あるぞ。本作もその一つだ。
変な呪文や鏡、ゲル状の緑色の液体。そんなものを組み合わせ、監督のベンベン節(と、私は呼んでいる)がその怖さを上手く演出している。特に鏡が吸い付いてくるシーンは怖いながら、とても綺麗。最後のケレン味も良し。
ストーリー的にはチープで、もう少し怖さの演出も出来そうなものだが、カーペンターだとやっぱ甘くなるな。私は。
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