フルチ後期作品『地獄の門』『ビヨンド』と比べると、信じられない程に精密なプロットです。この作品の原案、脚本にはフルチもかかわっていますので、やはり彼は優秀な監督だったのです。ヴィスコンティが褒めたという話も真実かもしれません。

この作品はミステリーでありまして、謎解きの質が素晴らしい作品ですが、それだけではありません。題材もまた魅力的です。画的にも、イタリアの建築物を使った背景がとても美しいです。

また、フルチ作品おなじみの陰惨な暴力もあります。それは不確かな情報に影響された愚かな大衆によって起こされたものでありまして、他作品とは違い、暴力シーンに思想的なものが込められている事を明確にしています。台詞を使いつつも説教臭く無く、ごく自然に、娯楽作品としてのテンポ落とさず暗示されているのです。

世界観が良いので、フルチファンなら複数回観ても楽しめる作品だと思います。この美しい映像を是非ブルーレイのハイビジョン画質で視聴したいものです。

2010/10/26鑑賞