[コメント] フル・フロンタル(2002/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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『トラフィック』を見た時は、本当にプロっぽいと思った(いや、プロの映画監督だから足り前なんですけどね)。3つに分けたストーリーがどうのこうの、じゃなくて、単純に「あぁ、この人プロだ」と思った。作品内容の影響かもしれないけど。で『オーシャンズ11』では「うわっ、コイツ絶対映画を楽しんで作ってやがる!」って思った。あれだけのキャストを揃えて、話も割りと面白く作っているのだけど、作品としては、イマイチパワーが物足りない。けど、本当に楽しそうな感じが伝わってきたし、やるべき所はしっかりやる、と言う感じのプロっぽさもあった。『アウト・オブ・サイト』はよく覚えてない(ぉぃ)けど、これも割りと楽しんでる傍らでプロっぽさがあったと思う。『ソラリス』は未見だけど、内容的に、あの作品ばかりはどうしても肩の力抜けない、とは思う(笑)。
で、今回、彼が「インディペンデント時代の原点」、要するに『セックスと嘘とビデオテープ』(未見)の時のスタンスに戻った、とかどっかで聞いた気がするんだけど、元々この監督がどういう人かもよく知らないので何とも言えないから、この謳い文句が本当かどうかは知らないけど、この映画は『オーシャンズ11』を小さくまとめて『トラフィック』を作ったんじゃないか?と思う。
いや、別にハシシ(麻薬の一種)が登場したからだ、だとかジュリア・ロバーツにブラッド・ピットが出ているから、だとか言いたい訳じゃなくて、これだけのキャストを揃えて群像劇を作った、と言う点で。しかも、『トラフィック』の時と違って、完璧に肩の力を抜いた作品で、かなり好感が持てた。ある意味では『オーシャンズ11』の時に感じた好感よりも、随分良い印象を受けた。
今回は撮影も担当しているのだけど、まぁ恐らく撮影の合間も和気藹々と笑いながらカメラ担いでたんだと思う。この人には、こういう力抜き気味の見易い面白い映画を撮って欲しい。
群像劇として、かなり楽しめた。途中、多少分かり難くもなったけど、恐らくそれは俺の頭の回転の鈍さが原因なので、作品とは関係が無い。としても「誰かが誰かと繋がっている」と言う点は面白かった。やっぱ群像劇はこうじゃなくちゃ。『マグノリア』みたいな、「誰かは誰かと繋がってる」てのが(個人的に)良い。複雑な人物関係が見え始めてきた所で感じる、何とも言えない爽快感。そして描かれるユーモア。見てるアナタもポップコーン食いながらジュース飲みながら見て下さい、と言う感じがしてくる。
誰もが心に孤独を抱えている。ちょっと大袈裟にも思えるキャッチコピーだとは思うけど、結構作品としては的を得て居ると思う。デビット・ドゥカブニーの自殺や、あの姉妹の関係、脚本家とその妻(姉妹の姉)、黒人俳優と脚本家の妻(要するに姉妹の姉・・・って繋がりすぎだろ)、そして黒人俳優とジュリア・ロバーツ(と、ブラッド・ピット)。
心が裸かどうかは別にしても、あんな狭い世界なのだから誰かは誰かと繋がっていて、そしてあんな狭い世界にも関らず裸の心は他人からはよく分からない。勝手な理想を抱くんじゃなくて、相手を認める夫婦。って、よく分かりませんね。
とにかく、見終った時、あの「映画でした」オチに、「あっ、この映画は映画なんだった」と訳の分からない感動を覚えながら、爽やかに劇場を後にする事が出来た。凄く幸せな余韻。
多少テンポが緩くも感じたけど、群像劇としては十分良い所を行っていると思う。爽やかな余韻を残して終われる作品。そして、何と言っても、これだけのキャストを揃えているのに、ちっとも嫌味に見えない所に好感が持てる。純粋に面白かった、と言う感じの作品。
ソダーバーグのこういう所は大好き。
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