[コメント] 激突!殺人拳(1974/日)
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70年代東映映画が最も元気な時代、暴力映画が数多く作られたが、その中でも極め付きの一本。おなじ千葉真一主演でコミカル要素満点の『直撃!地獄拳』(1974)と同じ年に、タイトルまで似通っている作品で、この二本が当時の東映作品を見事に表していると言って良い。暴力描写は凄いもののコミカル要素満載の『直撃!地獄拳』と較べ、こちらはコミカル要素はほとんどなし。リアルな意味での暴力性も無茶苦茶高く、さらに主人公の非道さは、少なくとも私が観た限りの全映画の中でも極めつけ。これを観終わった時にはかなり嫌な気分にさせられた。
なんせこの主人公の鬼畜ぶりは突出してる。オープニングで命がけで任務をこなしたところまでは良いけど、報酬が少ないと言うだけの理由で依頼主をぶっ殺し(しかも実生活の弟の岡崎次郎)、さらにその妹を「依頼料の足し」というだけで香港に売っ払ってしまう(冗談抜きで本当にその後売られたことが分かる描写まであり)。いくらなんでも主人公がするにしてはやりすぎだが、それを全く悪びないところにこの作品の凄まじさがある。
そして全編に渡るアクションの連続だが、これも他のアクション作品とは異なり、ほとんど主人公が一方的に相手をいたぶるか、逆に卑怯な手を使われて捕まった主人公が徹底的にいたぶられるかの二種類がメイン。一応後半に武闘大会みたいなのもあるけど、それにしてもほとんど勝負と言うより一方的な拷問のような描写ばかり。とにかく観ていてすかっとするよりも気分が悪くなうるような戦いのシーンばかりなのだが、逆にそれが印象に残る。
しかし意外にもこの主人公には自分なりのルールを持っているようで、自分がやると決めたことは命がけで何事も成し遂げるが、やらないと決めたことには、どんな拷問を受けようとも絶対に屈しない。最終的に頼りになるのは自分だけであり、その自分の前に立ちふさがるものあれば、命を懸けて排除する。野獣のような男ではあるが、一本筋の通った男の生き方と言えなくもない。
あと本作は日本国内よりも海外特にアメリカでの評価が高い作品としても知られている。レーティングシステムにより暴力描写に規制のあるアメリカにとっては、まさにやりたい放題のこんな作品が好まれるのだろうな。
これは推測だが、タランティーノ監督はグラインドハウスでこれを観たんだろうな。少なくともタラの作る作品の主人公には、脈々と琢磨の血が流れていることを感じさせてくれるものである。
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