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[コメント] プラン9・フロム・アウタースペース(1958/米)

「神に授かった知性の浪費だ!」 この映画の監督に言われたくない・・・。(2011.11.27)
HW

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ある目的を持って地球人とのコンタクトを試みている宇宙人が空飛ぶ円盤を地球に送り、墓場の死体を二つ三つ生き返らせる、というのが大筋。その理由は宇宙人の首領によってこう語られる。

「困ったことに地球人は我々の存在を認めようとしなくなっている。だが死者が歩き回るのを見れば、いやでも我々の力を思い知るだろう」

 生き返らせた死体を行進させて自分たちの存在を知らせたい、という、なんだかややこしい上に、まったく悠長なこの「プラン9」だが、その秘められた目的は、なんと、太陽系を破滅から救うことにある。原水爆を生んだ人類はやがて「太陽粒子」なるものを爆発させ、そのときには地球のみならず太陽系すべてを消滅させてしまう、それを止めるためにやっている、というのだ。「ここにガソリン缶が一つあるとしよう、そのガソリン缶が太陽だと思ってみたまえ」と、ひたすら眠くなる説明を円盤に乗ってきた宇宙人の男が延々と五分くらいしているが、だいたいそんなことが言いたいらしい。「落としたら、直ったわ」なんていう会話がまかり通る科学力の文明から来たわりには、見上げた志である。とはいえ、塗りたくったデカい分度器を逆さにしたような操縦桿の前で男が二人ただのイスに座っている、地球人の飛行機のコクピットを思うと、確かに彼らの円盤の科学力は計り知れないのかもしれない。

 男の熱弁もむなしく、「狂ってる」と地球人にあしらわれると、今度は円盤のもう一人の乗務員である女が激怒し、「自国のために他国を破壊するのは正気だというの?」と地球人に向かって問う。が、この弁護は男の癇に障ったらしく、引っ込めさせられる。曰く、「女性は種の進化を担う。戦いは男の役目」なのだそうだ。男は、ワシントンから派遣された軍人に向かって呼びかける。

「君は君の国の軍服を着て、私は自国のものを着ている。手荒い手段を使ったが、ほかに道がなかった」

 もう少し手荒い手段を使ったほうがよかったんじゃないだろうか。

 冷戦と核戦争の脅威という時代背景をうかがわせるクライマックス(?)の会話に、エド・ウッドも時代の子なのだ、と一瞬感銘を受けかけたが、考えてみると、とくにメッセージがあったわけではなく、軍拡競争に明け暮れる人類に警鐘を鳴らすために宇宙人が地球にやって来る、そういう小説や映画がすでにあったのをたまたま真似したところ、やたらと説教が長くなってしまった、というだけかもしれない。

 ちなみに、宇宙人男女の男のほうの名前、「イロス」と字幕が付されているが、"Eros"である。エド・ウッドにはギリシャ神話の知識があったのだ。あったとして、何の救いになるとも思わないが。褒めていません。

(評価:★1)

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