[コメント] モダン・ミリー(1967/米)
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アンドリュースを中心に持ってきた陽気なミステリー仕立てのミュージカルで、話は無茶苦茶ながら、とにかく明るく、アンドリュースのキャラ性もあって楽しい作品に仕上がった。アンドリュースは確かに売りだったかもしれないが、他のキャラもみんなきちんと見せ場が作られていて、それぞれのキャラが見事に立っている。特にフォックスの女装姿はかなり笑える。あれを本当に女性だと思ってしまうあたり、誘拐団の目も凄いが。そうそう、誘拐団と言えばパット・モリタが、ドジな東洋人を演じていて、「おお!若い!」と感慨深く思わせてもくれる。
演出上の遊び心も多く、『アニー・ホール』(1977)に先行して心情を字幕で映してみたり、映画ならではの演出もふんだんに用いられていて、実験性も満点。実に楽しい。
ただ大変面白い一方、突出したキャラと演出に物語が追いついていなかったのは問題か?ソープ・オペラ風に作ったのは正しいと思うのだが、個々のキャラが、何故この考えに至ったのか。という部分がすっぱりと抜けてしまっているので、物語展開の必然性が極めて薄いのだ。かといってスラップスティックとしても思い切りが足りず。物語と設定が足を引っ張ってしまった感じで、その辺がとても残念。そこが上手くスリ合わさっていたら紛れもない傑作になった作品なんだが。この辺はやっぱり実験的作品として見てみるのが正しいのかな?
ところでこの時代、というか、この年はミュージカルの復活が叫ばれていて、このあたりからやたらとミュージカルが作られていたが、ことごとくそれらは失敗。ニューシネマ流行りの中で復古主義は、やっぱり無理があったのではなかったのだろうか?本作も素直に作っていればかなり面白くなったのに、どこかでニューシネマへの色気が感じられてしまうのだよな。それがちぐはぐさの理由なのかもしれない。
結果、ミュージカル不調のこの年にあって健闘はしたが、アンドリュース主演のなかでは低調で、一桁違う興行成績になってしまった。傑作になり得た作品だけに、作られた時代が悪かったのが勿体ない。
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