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[コメント] 十七歳(2002/日)

上映終了後ロビーで「赤面してましたね」と声を掛けられたらと更にほおをポッと紅く染めて走って逃げてしまいそう。もし自分がこの作品の原作者だったら観賞中に気恥ずかしくて悶絶死しかねない。
tacsas

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ブレックファースト・クラブ』に「大人になると心が死ぬ」みたいなメッセージがでてくる。しかしこの作品を大人になって観返してみるとそれが単に一方的なメッセージだったわけではないと気づく。しかし、この『十七歳』では色んな意味で気が気でなかった。

余りにも画一的に描かれる大人達。そして弱さを見せない少女。この女の子はまるで「1.強い、2.賢い、3.カッコイイ、4.悟りを開いた」ではなく単なる意地っ張りに見える。その青さも表現の1つなのかも知れないが、「何故」も「対話」もなく、ただやみくもに「いいことあるさっ」「ガンバレ!」って・・・企業のイメージアップキャンペーンかっていうんだよ。お前、教師のことバカにしてるけどさ、同じじゃないのかい。

この作品はイジメられている子が自分よりさらに蔑める対象を模索しながら、逃避の対象を小説にもっていったという子供の妄想のみである気がする。確かに打ち込めることを見つけて現状を打開しようとするなんてのは泣ける努力だ。ある程度、現実に近い話なのかも知れないが、それでもこの子は青く、過剰に自己中心的である。他人の痛みを感じずに自分の痛みだけを解決に導く手法が悪いとは云わないが、米国ではスピルバーグを筆頭に世間への見事な復讐を遂げている元ルーザー創作家が大勢おり、ハリウッド独自の世界といわれるようなルーザー史上主義社会が成立っている。何故なら復讐のセンスが良いからだ。しかしこの作品はイジメられてる子達の現実を知れというメッセージではなくアホ不良の聞いててつまんない過去の自慢話と同レベルのイジメられ自慢話を聞いているようなウザったさを持っている。もしかするとただ単に可憐な少女を撮りたかっただけなのかも知れないが、忍成修吾という少年の存在が残念ながら可憐さをも台無しにしてしまう。彼自身はウマくはないものの飄々とした佇まいが目を引く。しかしこの話だと彼の優しく一途な愛(?)が彼女を腐らせているようにも見えるのだ。このシーンは監督の持つ童貞臭を良いさじ加減で押し出すべきではなかったかと感じる。どうせなら意外性をもって復讐なら『レベルポイント』。情感出すんなら『害虫』ぐらいやっても良かったんじゃないかと思う。もしくはこんな紋切り視点じゃなくしてトッド・ソロンズみたいに現実的な形で正当化してまとめきれ。などと無駄にあがいても今関監督は恥ずかし気もなく真正面から少女の戯言を撮り続ける。そして非常に繊細かと思われる母と娘の心の交流を臭過ぎる演出で不用意にフィルムに収める。スゲェ不用意だらけ。

もうね、こちらはどんな方向から観ようかと試行錯誤してるっていうのに、この主人公はしまいにゃ原作が発行されたらしいポプラ社に駆け込んでいくわけですよ。この描写は本当になんじゃらほい(リアルな死語)なわけですよ。お前こんなのじゃ問題解決にならねえっつんだよ。オーイ自慢話を映画にすんなよと。小説書けない奴はここから先どうすればいいんだい。だから「ガンバレ!」てか。こんなんじゃ登校拒否増えるだけじゃないのか・・・

今さらながら作品の出来が救いようがないほど酷いというわけではない気もする。俺は単に対象年齢オーバーなだけかも。まあいいか。

(評価:★1)

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