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[コメント] 渦巻(1945/英)

パウエル監督の作り出す映画には神秘が演出される。そう、こんなベタベタなラブ・ロマンスであってでも。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 これを観た時、変な気分になった。ここまでベタベタな(しかも私には相性が悪いラブ・ロマンス)作品なのに、何でこんな楽しい作品に仕上がったんだろう?と自分でも不思議になった。

 不思議なだけだと気分が悪いのでちょっと分析的に考えてみよう。

 先ず、主人公のカトリーナの性格。非常に直情的で、目的のために脇目もふらず直進する。冒頭部分で子供の頃からの描写を見せたのは卓越した手法だった(『アメリ』でもやってた)。対するトークィルは過去に何か大きな挫折を味わったらしく、ひねくれたものの見方をしているが、それが自分の本当の気持ちを覆い隠してしまい、自分でもそれが分からなくなっている…別段映画では当たり前の役割だ。周りのちょっと変な連中(個性的と言った方が良いか?)も演出の味付けとしては普通。

 物語のクライマックス。潮流に巻き込まれたカトリーナとトークィル…これは結構見応えがあったな。自然に対して、共同で立ち向かう姿はやっぱり見所としては良い。

 最後。カトリーナと別れたトークィルが入った古城…これだ!

 この作品には間違いなく“神秘”という味付けがされてたんだ。人間以上の存在が見え隠れする演出。それは、雨や渦巻きと言った自然現象である場合もあり、最後の古城でのメッセージでもあり。そんな視点があったからこそ、嫌いなジャンルであるにも拘わらず、私にとっても“面白い”と言えるだけのものがあったと言う事か。

(評価:★4)

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