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[コメント] きょうのできごと(2003/日)

現代の青年の日常を一晩に凝縮して描いた群像絵巻。テーマはなんとなく小津風だけど、演出はやはり新世紀に入っていることを思わせます。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 意識してのことだと思うのだが、ここには20代前半の青年達ばかりが登場する。彼らは小さくまとまったコミュニティを形成しており、そこで自分というものを見つめている。ここには社会の大きな変革も、大人の権威も存在しない。お互いの心を対等のものとして見ている横のつながりと、そこでの感情のぶつかりのみがトピックとして描かれ、縦のつながりが希薄なのが特徴。それがなんか妙に心地良い。子供でもない。責任ある大人でもない。そんな限られた時間が存在する現在だからこそ、これが貴重な時間となる。

 これをモラトリアム期間と言う人もいるだろうが、現にあるものをそのまま描いたなんて、これは貴重な作品だよ。

 それとこの作品は、人間だけのつながり、つまり“見る”だけじゃなく、テレビに封じられた“観る”という行為を通しても世相をよく表した作品とも言える。

 そう言えば大学時代はよく何人かの友人で、傍らでテレビ付けっぱなしにして話をしてたな。時折ニュースの話題を出しながら、なんとなくまったりと過ごす時間…あの時は暇つぶしのような感覚しかなかったけど、責任を押しつけられてる今だからこそ、そう言う時間の貴重さってもんが懐かしく思い起こされる。

(評価:★4)

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