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[コメント] 勇気ある追跡(1969/米)

ジョン・ウェインの魅力は、脇に回ってこそ輝くってこともあるのだ。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 “アメリカ人の理想”とされたジョン・ウェインだが、自らのスタイルを崩すことなく徹底して娯楽作に出演し続けたため、賞とは無縁のままだったが、俳優生活40周年にして初の主演男優賞でオスカーを得たという記念碑的作品。1969年全米興行成績6位。

 アカデミーの長い歴史を見てみると、その傾向が見えてくるが、1960年代までは、基本的に文芸作品を賞に挙げ、娯楽作は賞を取れないような構造を取っていた。結果として西部劇はよほどのことがないと賞を取ることが出来ず、しかもウェイン出演作は、観客を楽しませることが主眼のため、どうしても賞の壁は高かった。だが、60年代後半になるといわゆるニューシネマの台頭と時を同じくして、その傾向は少々変化を見せた。それは「文学とはこうあるべきだ」、「文芸とはこうでなければならない」という基準が崩れてきたわけだ。枷を外すことによってより広い見地で映画が評価されるようになったことになるが、それでやっとウェインにも賞を与える事が出来るようになったということにもなる。

 ただ、この作品は単なる娯楽作と言うよりも、いかにウェインの魅力を引き出すかというところに主眼が置かれているため、他の西部劇とはちょっと毛色が違っていることも重要だろう。更に主人公をダービーの方に置き、ウェインがそのサポート役にしたことによって、擬似的な父親としての魅力を増したのも大きい。

 実のところ、ウェインは、実のところ主人公よりも脇に回った方が魅力が増す。何故なら典型的アメリカ人のテンプレートであるウェインは、どんな年齢になってもやんちゃな性格を出さねばならず、年齢的にそれはそぐわない所が出てきた。その性格だと、話をまとめるためにメンター(指導者)的役割を果たす人物が必要になるのだが、最早それはやり尽くしてしまった。そこで基本的に駄目人間だが、やる時は命を賭けて責任を果たすという役割は、脇に回ってこそ輝く。その役割をはっきりさせたのが本作だとも言える。

 本作の主演はウェインでなければならない。他の人がやったらその魅力を出すことが出来ないから(原作者のポーティスはウェインを念頭に置いて小説を書き、それをウェインに送ったところ、すっかり惚れ込んで映画化の運びとなったらしい)。

(評価:★3)

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