[コメント] フォーチュン・クッキー(2003/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
私は映画を観るのが面倒に感じる。そこで知識の無さを埋めるべく、まれに映画関係の本を斜め読みするんですが、「若手脚本家は総じてコメディを書くのが難しいと感じる」といった記述をよく見かける。
この映画は私にとってラブコメ初体験となる作品なのですが、上記のコメントは真実だと思いました。脚本レベルが高い。娯楽脚本の製作マニュアルを、社民党にとっての憲法第9条よりも堅実に守っている揺ぎ無きエンタメ。
見せ場が非常に多い。そして観客層をはっきりと絞っている。高揚感は音楽的リズムを意識しており、心地よく私の心を満たしてくれた。<下品な弟と姉の電撃的和解>とか、<小言ばかり言う母親に学園生活の苦労を見せつける>とか、<ウザいハゲ教師をやっつける>とか、<〆は歌とダンス>とか、サービス満点。むろんヒロインが王子様と結ばれるのは説明するまでもありません。シンプルなだけに実力が問われる、寿司ネタでいうところの「玉子」みたいなストーリーですが、本当に楽しめた。とくに優れた点は、細かいエピソードまではっきりと印象に残るところだと思う。伏線がとにかく多いけれど、その配慮のおかげで混乱は全く無い。娯楽作は目的がはっきりしているから、「わかりやすければ良いってものじゃない」なんていう逃げは通用しないのだ。ファンタジー的設定は「キラキラした世界観を出すため」といった少女漫画的理由から組み込んだわけでは断じてなく、前述の見せ場と密接に絡んでいて、圧倒されるほどの脚本美を感じた。
教師をやっつけるエピソードなんかは伏線となる設定が強引だし、脚本家の思い入れは殆ど感じられない人工的な物語だけど、娯楽作品も徹底すれば芸術になりうるということを証明しているような映画。このような娯楽映画の教科書みたいな作品が完成していながらも、いまだ映画が死んでいないところをみるに、娯楽は不滅なのだと思ったし、男性向け映画がいかに「火薬と思想」に頼っているかがわかる。
2010/11鑑賞
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。