[コメント] 我が人生最悪の時(1993/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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1980年代後半邦画が最も不振の時期にデビューし、寡作ながらスマッシュヒットを飛ばす林海象監督のメイン・テーマとも言える探偵物語。
本作は「いかにも」な低予算で撮られ、画面もモノクロームというチープさだが、それを逆手にとって、低予算ならではの巧さで撮られているのが特徴。
本作は演出が際だっているが、特に深い黒さの演出は実に良い。闇の表現の巧さと言い、真っ黒な血の表現と言い、リアリティをこえた映像表現のあり方を思わせてくれる。モノクロの映画って、撮りようによってはこんな味が出るのだと改めて思わされるところ。
それと横浜を舞台とすることで、無国籍さを印象づけているのも面白い。今や日本でも都市部はほとんど無国籍状態だが、特に横浜は港の関係で古くからの外国人の街があり、そこを舞台にすることで、特殊な演出なしに無国籍な雰囲気を作り出すことに成功している。広東語も上手く使用されてる。
物語は一本道でかつて60年代から70年代初頭にかけて作られた無国籍ものっぽく作られているが、演出の巧さによってそれに止まらない奥行きを感じさせてくれる。
容赦ない暴力描写と救われない物語展開は強く印象に残るが、その合間合間に挿入されるコメディ・タッチが上手く緊張感を和らげさせてくれたお陰で緩急の付け方が実に上手く、最後までダレ場なしに一気に見せてくれる。
あと細かいことだが、本作は最初から三部作として作られることが前提だったらしく、マイクの下宿してる映画館には続編の『遥かな時代の階段を』(1995)や『罠 THE TRAP』(1996)の看板が見えるのも面白い演出。
確かに本作は低予算作品で、大きな話題にもならなかったが、この時代の邦画の佳作としてお勧めの作品。
ちなみに本作の脚本で天願大介がデビューしたが、この人は今村昌平の長男。暴力描写に容赦がないのは蛙の子は蛙と言うか…
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