[コメント] ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地黎明(1991/香港)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
本作は映画史上においてもかなり重要な位置づけを持つ作品で、ある意味香港映画におけるカンフー映画の完成型とも言えるかも知れない。ブルース=リーやジャッキー=チェンによって世界的に紹介されたカンフー映画も、世界的に見たら当時は完全に下火。しかしそんな中でも香港ではカンフー映画は作られ続け、やがてワイヤー・アクションという独自の手法を確立するに至る。そのワイヤー・アクションを広く世界に紹介したのは本作が最初となる。又、今やジェット=リーとして国際スターとなったリー・チンチェイの本当の意味での出世作でもある。香港映画を超え、世界的な映画を作り上げたスタッフの心意気に拍手しよう。アメリカにおける西部劇レベルの作品とも言えよう。
物語も武侠映画としての体裁を踏襲しつつ、フェイフォンの強さをしっかりと描ききっており、実に小気味の良い作品になってる。強い人間を描く場合は溜めが必要で、道理を通すためにやせ我慢を続ける主人公の姿ってのは、見ていて実に格好良い。そして勿論、道理を超えたところで爆発。典型的と言われればそれまでだけど、この様式美こそアクションでは必要ではないだろうか?
勿論それは、アクションの自信に裏打ちされているからこそ。様々な場所で行われる殺陣の動きは見事!と言った感じ。ワイヤー・アクションはあるにせよ、正統的カンフー作品としても充分すぎるくらいの見所あり。
ジェット=リーも髪の毛を伸ばすよりもこちらの方が目鼻立ちがくっきりするので、やけに似合ってる気がするし、強いんだか弱いんだか全然分からないフー役のユン・ピョウもポイントポイントで良い役やってる。中国社会では恋愛感情を持つ訳にはいかないヒロインというのもなかなか設定的に良いね。単純にひっつければ良いってもんじゃないんだし。儒教社会の複雑な人間関係は恋愛向きかもね?
多少褒めすぎた感じもあるが、気になったところもあり。本作は脇道が多い物語で、基本的に降りかかってきた火の粉を払うことばかりなのだが、そうなると基本筋がぼけてしまってしまい、フェイフォンの戦いが何のためだったか?と言うのが分かりづらくなってる所。特に本作には劇場公開版とディレクターズ・カット版が存在するのだが、ディレクターズ・カット版になると戦いのシーンに力入れすぎて本筋とはあんまり関係のない話がどんどん挿入されてしまうので、むしろ本作を本当に楽しみたいなら公開版の方にすべき。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。