[コメント] アメリカン・スプレンダー(2003/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
チラシを読んで、「あぁ、アメリカの低予算インディペンデントムービーか・・・」と思って、内容に軽く目を通して「あぁ、低予算で「コンプレックス恋愛シネマ(謎)」って事は系統的には『セクレタリー』か・・・」て思ったんだけど、全然違ったわ(アホ
各地で賞を受賞している本作だけど、強烈に面白い映画とも思えない。だけど、強烈に面白くない所がこの映画の面白味なんだよね。何も強烈に面白い必要は無いんだから。何度か見ていて爆笑したけど、大して心に残る傑作とも思わない。けどまぁ、こんな映画心に残しててもねぇ。だって、陰気なハゲでデブの毛むくじゃらのオッサンのリアルダークストーリーの1ページだもん。
だからクスクスと笑えて、こっそり面白い。
いや、なんつーか、ハゲでデブのオッサンが、陰鬱を自虐的に漫画に書いて面白がられてる姿を見て、笑ってる俺自身、何が面白くて面白いのか良く分からないなぁ。でも、こういう陰鬱な日常が笑えるうちはまだ良いさ、とかふと思ってみたり。ホント、何が面白くてこんなオッサンの半生見て面白がってるんだろうね。勿論、コレは誉め言葉として。
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終盤、ガンが見付かり、化学療法での闘病記を書きながら、その影響からか、追い詰められてうなされた主人公はこういう。「俺の生活を漫画が描いているのか、それとも、俺が漫画の生活を生きているのか」と。そして微妙にアイデンティティに悩んでる空気を醸し出す。しかし、映画はラストでとんでもない事になる。
映画の中での「定年退職パーティー」の際に、現実の主人公(要するにこの映画の原作者の爺さんだ!)と映画の中の主人公が同化するのだ。結局、このオッサンは自分のストーリーをストーリーにしていただけなんだよね。あぁ、悲しき自虐。あぁ、嬉しき自虐。もっと自虐しろ(ぉぃ
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全編を彩るゆったりとした曲調の音楽(ジャズ?)。ちょっと暗めで、どこかアイロニー漂わす画面の臭い(?)。デタラメと言うか、製作サイドの思うように作った、と言わんばかりの構成。
あぁ、低予算アメリカ映画だなぁ、と一人感心しながらも、時々画面に登場する本物のハービー・ピーカーが登場して話をするシーンで「なんて計算されたデタラメなんだ」と一人驚いていた。
まさに、この映画は「コミックの一部(ラストシーンでも、爺さんハービーは「映画の年」と出した「アメリカン・スプレンダー」を刊行している訳だし)」として”「ハービー・ピーカーの陰鬱!な人生を描いたコミックの一部」”として作られてるんだな、と言うか何と言うか(実際にコミック風の演出?もあったし)。
そういう作り方をしていると言う意味じゃ、漫画の「アメリカン・スプレンダー」と同じ様に、上手く発想を転換させて描いている、と言う事で忠実な映画化とも言えるのかな。
但し、音楽の影響か、それとも他人の半生を除いている以上、日常以外の何物でもないから仕方が無い物なのか、そこは良く分からんが、少々ゆったりしすぎていて作品自体が長く感じたのが気になる。あ、勿論俺が集中していなかっただけ、と言う事もあるんだが。
◇
本人が見ている世界は灰色で、糞みたいに詰まらない所かもしれない。買い物に行けばユダヤ人のばあさんがグダグダ言ってやがるし、職場に行けば変な患者に囲まれて書類整理。妻には逃げられる。そんな灰色真っ只中の負のパワー満ち溢れた世界だとしても、そいつをそのまま切り取って人に見せたら面白かった、と言うのは自虐なんだろうか。
ホント、詰まんなくて面白い映画だ。
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